[No.76]Teslaが世界最大のロボット企業になる!?自動走行技術をヒューマノイドに応用、クルマのように部品を標準化し大量生産により低価格を実現
TeslaはAI技術を発表するイベント「Tesla AI Day 2022」を開催し、ロボットの開発状況を明らかにした。
このロボットは「Optimus」と呼ばれ、昨年のイベントではそのプロトタイプが公開された。今年は、その開発プラットフォームが登場し、ステージの上をゆっくりと歩くデモが実施された(下の写真)。
Elon Muskはロボットを大量生産する計画で、価格はクルマより安く、2万ドルになるとの予測を示した。更に、経済生産性の観点からは、ロボットはクルマより重要で、Teslaはロボット会社に転身することを暗示した。
Optimusとは
Teslaが開発しているロボット「Optimus」は、人間の骨格を模したヒューマノイドで、二足歩行し、両手でものを持つことができる。
人間は自然界で進化し、骨格や関節や筋肉などが最適化され、効率的に動くことができる。Optimusは最適化された人間の物理構造を参考に設計された。
ロボットは配送センターで荷物を運び、また、製造工場では部品の組み立てなどに使われる。(下の写真、Optimusが両手で荷物を持ち、それを運んでいるシーン。)
ロボットの構造
ロボット(下の写真中央)は、人間の筋肉に相当するアクチュエータ(赤色の部分)と、神経系に相当する電気系統(水色の部分)から構成される。28のアクチュエータを搭載し、人間の動きを再現する。
電気系統ではバッテリーを搭載し、また、ロボットの頭脳としてTeslaが設計した半導体(SoC)を実装する。通信技術としてはWi-FiとLTEを採用するとしている。
視覚とナビゲーション
ロボットはカメラを搭載しており、周囲を撮影しオブジェクトを把握する。ロボットがプランターの植物に水をあげる時には(下の写真左側)、植物の位置を認識し(右側)、じょうろを的確に動かす。
また、屋内を移動するときには、カメラで家具などのランドマークを認識し、安全なルートを算出する。ここには、Teslaの自動運転技術が使われているとしているが、技術詳細は公開されなかった。
アクチュエータ
Teslaは人間のように効率的に動けるヒューマノイドを目指していて、このためにアクチュエータの最適なデザインを模索している。
アクチュエータは人間の筋肉に相当し、その動きは速度とトルクの関係で定義される。センサーでそれらを計測し、一番効率的に動かすための関係を検証した。
その結果、アクチュエータの種類を6とし、解析結果をもとに最適なデザインを開発した。(下の写真、6つのアクチュエータは色分けして示されている。グラフはそれぞれのアクチュエータの速度とトルクの関係。)
開発過程
昨年のイベントではOptimusのプロトタイプ(下の写真左側)が紹介され、今年はその開発プラットフォーム(中央)を中心に、開発状況が示された。
更に、最新版のOptimus(右側)がステージに登場したが、実際に歩行することはできなかった。
最新版のOptimus
ライブデモの代わりに、Teslaは最新版Optimusが研究室で歩行訓練をしている様子を公開した。
2022年4月に、最初の一歩を踏み出し、技術開発を進め、腕を振り、つま先をあげることができるようになったが、まだ歩くことはできない。
最新版Optimusは、アクチュエータやバッテリーなど必要なハードウェアを搭載しており、現在、ソフトウェアを中心に技術開発を進めている。
ロボットを開発する理由
イベントでMuskは、Optimus(下の写真)は経済生産性を二けた向上することができると、繰り返し述べた。ロボットが人間に代わり、荷物を運び、部品を組み立てることで、経済生産性が大きく向上する。
ビジネスの観点からは、クルマよりロボットのほうが、将来性があると述べ、Teslaはロボット企業に転身することを示唆した。
Muskの発言の解釈
Muskの発言が業界に衝撃を与えているが、同時に、これをそのまま受け止めるのではなく、割り引いて解釈すべきとの意見も少なくない。
Muskは壮大な構想を打ち出し、社会の注目を集めるが、これが不発に終わるケースは少なくない。
また、Optimusは優秀なエンジニアを雇い入れるためのPRだという解釈もある。
Muskの発言は、厳密なロードマップとは異なり、柔らかい構想を示したもので、これをどこまで実現できるのか、ウォッチしていく必要がある。