[No.66]AIアートは予想外に好評!!OpenAIはテキストをイメージに変換するAI「DALL·E 2」の販売を開始、アルゴリズムが新時代の芸術を創作

DALL·E 2」はOpenAIが開発したAIで、言葉の指示に従ってイメージを生成する。生成されるイメージは高品質で、人間が制作したものと区別はつかない。

OpenAIはDALL·E 2を販売することを決定し、企業や個人はこれをサブスクリプションベースで使うことができる。雑誌の表紙のデザイン、商品カタログの生成、子供向けの絵本の制作など、利用分野は幅広く、新たなAIビジネスが生まれると期待されている。

出典: OpenAI

DALL·E 2とは

DALL·E 2はイメージを生成するAIモデルで、テキストの指示に従って画像を出力する。

例えば、「駅で猫と一緒に電車を待つ少女」(左側)や「ゴールデンゲートブリッジを走る列車」(右側)など、DALL·E 2は架空の世界を高精度で描き出す(下の写真)。

DALL·Eは、画家サルバドール・ダリ(Salvador Dali)と、映画で有名になったロボット「WALL·E」を掛け合わせた造語で、奇抜な世界を描き出すAI画家を意味する。

出典: OpenAI / maderix / Danielle Baskin

DALL·E 2を販売

OpenAIはDALL·E 2をサブスクリプションベースで販売することを決定した。

米国のメディアが報道した。初回は100万人が対象となり、クラウドからDALL·E 2にアクセスする。
料金は15ドルで、115のクレジットを購入する。

1クレジットで1回アクセスでき、テキストを送信すると、それに従ってイメージが4枚生成される。15ドルで460枚のイメージを生成できる。

AIアートの爆発

DALL·E 2は非公開であるが、OpenAIは世界のクリエーターと共同で、イメージ生成機能について検証を進めてきた。

DALL·E 2は世界118か国で3,000人のアーティストが使っており、作品を生み出す過程に、このAIを組み込んでいる。アーティストは様々な形でDALL·E 2を使っており、AIアートが爆発的に成長する兆しを示している。

雑誌のカバー

女性向けのファッション雑誌「Cosmopolitan」はDALL·E 2が生成したイメージを雑誌のカバーとして採用した(下の写真)。

これは6月22日に出版されたもので、世界初のAIが生成した雑誌カバーとして話題を集めた。

このイメージはデジタルアーティストKaren X ChengがDALL·E 2を使って生成したもので、開発に要した時間は20秒としている。

出典: OpenAI / Karen X Cheng / Cosmopolitan

芸術写真を創作

芸術写真はカメラの代わりにDALL·E 2で制作される。

メキシコ在住の写真キュレータMichael Greenは、DALL·E 2で著名写真家のスタイルで作品を創作した(下の写真)。

左側はDALL·E 2が写真家Helmut Newtonのスタイルで生成したイメージで、右側は写真家Lee Jeffriesのスタイルで生成したイメージ。

Newtonはファッション雑誌向けの写真家で挑発的なイメージが特徴。

Jeffriesは世界のホームレスの写真を撮り続けている。

リアルな写真に見えるがこれらはDALL·E 2が生成したイメージである。

出典: OpenAI / Michael Green

芸術家の作品

Leopold Museumはウィーンの美術館で、オーストリアの画家Egon Schieleの作品を数多く収集している。

Schieleは前衛画家で活躍が期待されていたが、1918年に28歳で亡くなった。

いま、DALL·E 2を使ってSchieleの画風で絵画を生成するプロジェクトが進んでいる。

DALL·E 2に「Egon Schieleのスタイルで作画」するよう指示すると、そのイメージを生成する(下の写真)。

もしSchieleが生きていたら、どんな作品が生み出されたかを探求するもので、美術館はこれらのイメージを本人の作品と合わせて展示する。

出典: OpenAI / Stefan Kutzenberger

ビジネスが生まれる

これらトライアルの結果を見ると、DALL·E 2のインパクトは予想外に大きく、AIアートの位置づけが大きく変わろうとしている。

DALL·E 2がクリエーターに代わり、雑誌の表紙をデザインする。
子供向けの絵本のイラストをDALL·E 2が制作することも計画されている。

また、企業は、商品のコンセプトやプロトタイプのイメージをDALL·E 2で生成する。

商品カタログのデザインもDALL·E 2が担当する。AIアートへの需要は大きく新たなビジネスが生まれようとしている。

問題点を抱えながら

期待されるDALL·E 2であるが、倫理的な問題点を数多く抱えているのも事実である。

DALL·E 2は、女性やマイノリティに関してバイアスがあり、出力するイメージは公平でないことが分かっている。

また、現実と見分けのつかないリアルなイメージを生成するので、実在の人物を描くことは禁止されている。また、DALL·E 2はクリエーターを置き換え、人間の職を奪うことになり、失業対策が喫緊の課題となる。

多くの問題を抱えながら、DALL·E 2の販売が始まる。