[No.22] リモートワークで二社を掛け持ちし給与を倍増する!! シリコンバレーで広がるちょっと危険なワークスタイル

シリコンバレーで多くの企業がリモートワークを導入しているが、二社で勤務し給与を倍増する社員が現れた。

テック企業の多くは完全リモートワークを採用しており、社員はオフィスに出社することなく、在宅にて二社掛け持ちで勤務する。会社の就労契約に抵触しており、見つかれば解雇となるが、給与が倍増するというインセンティブは大きい。

​危険なワークスタイルであるが、リモートワーク時代の働き方として議論を呼んでいる。

出典: Overemployed

リモートワークの実態

シリコンバレーではGoogleやFacebookなどがハイブリッドワークに移り、在宅勤務とオフィス勤務を併用した形態を取る。リモートワークだけを選択するオプションもあり、社員の2割が完全在宅勤務で働いている。

一方、DropboxやSpotifyなどはリモートワークを中心とする勤務体系を採用しており、多くの社員はオフィスに出社することなく勤務を続けている。
​また、Automatticなどはオフィスを持たず全員がリモートで勤務している。

正社員として掛け持ち勤務

このように、テック企業で社員の多くがオフィスに出社することなく在宅で勤務している。

このような雇用環境が続く中、二社を掛け持ちして勤務する社員が現れた。
ギグワークのような契約社員ではなく、正規社員としてリモートワークで二社を掛け持ちする。
パソコンで業務をこなし、打ち合わせはZoomなどテレビ会議で参加する。

​二社分の仕事をするのは無理と思われていたが、業務内容によりこれが可能であることが分かってきた。
​サンフランシスコの新興企業Overemployedは二重勤務に関する情報を発信しておりその実態が明らかになってきた。

フィールド・エンジニアのケース

Overemployedによると、エンジニア”sidegigs”はフルタイムで二社を掛け持ちして働いている。

ソフトウェア・エンジニアとして20年のキャリアを持ち、現在はフィールド・エンジニアとして二社で勤務している。一社は2020年11月から勤務を始め、もう一社は2021年4月に就職した。二社を掛け持ちして勤務し、年収は67万ドル(7370万円)となる。
二社で勤務しているが時間外勤務は少なく、仕事に追われているという様子はない。

出典: Overemployed

二社で働くためには

二社で働くためにはそれなりのスキルを必要とする。最も重要なポイントは秘密の保持で、二社で勤務していることを口外してはいけない。

家族内に情報を留めておき、友人や他の家族に打ち明けないようアドバイスしている。また、仕事に優先順位をつけ、掛け持ちしている2番目の仕事はプライオリティを下げるよう指示している。

​具体的には、LinkedInなどに仕事の履歴を掲載するときは、メインの会社の職業を掲示し、サブの会社については何も触れない。履歴書も同様で、サブの会社の仕事については何も記載しない。

時間管理のポイント

実際に仕事を始めると、打ち合わせ時間の調整が最大の課題となる。

Zoom会議で二社の打ち合わせ時間が重なるときの対応がカギとなる。基本的には、二台のパソコンで業務をこなし、会社ごとに使うマシンを決めておく。

​会議はできるだけ手短に効率的に運用し、存在感を印象づける行動を取る。どうしても二つの会議が重なるときは、丁寧に断ることを推奨している。

何故こんなことが可能になるのか

ワークスタイルが柔軟なシリコンバレーであるが、二社を掛け持ちする正規社員が出現したことは驚きをもって受け止められている。

コロナでリモートワークが始まった当初は緊張感をもって仕事を進めてきたが、このワークスタイルが定着した今は社員の印象が希薄になり、管理職の目が届きにくくなっている。

​対面で会ったことのない社員が増え、人間関係が疎遠になっていることが原因の一つとされる。

二重勤務できる企業とできない企業

また、二重勤務に向いている企業と避けるべき企業がある。

二重勤務が可能となるのは安定した大企業で、厳しいアウトプットが求められないところが多い。更に、仕事の内容が明確に定義されているテック企業が適している。

​また、銀行など金融関連企業も候補になる。反対に掛け持ちできないのはスタートアップで、社員の数が少なく、仕事の成果が厳しく評価される。また、GAFAMなど大手テックはリモートワークのルールが明確に規定されており、二重勤務することは難しいとしている。

出典: Overemployed

二重勤務に移行するパターン

実際にどれだけの人が二重就職しているかについての統計情報は無いが、この形態が徐々に増えつつある。

いきなり二社に就職するのではなく、転職する際に会社を辞める前に、次の会社の勤務を開始し、トライアルで掛け持ちするケースが増えている。

​実際にダブルで仕事をしてみて、上手くいくことが分かると、本格的に二重就職するパターンが多い。
​二重就職が発覚すると、就労規定に抵触するため解雇になり、危険と隣り合わせのワークスタイルといえる。

二重勤務を容認する?

これから企業の管理職は二重就職社員を見抜くスキルが求められる。

​一方で、労働力不足が深刻なシリコンバレーで、テック企業は優秀なエンジニアを雇い入れることに苦慮している。今後、二社掛け持ちのワークスタイルを容認する企業がでてくるのか動向を注視する必要がある。