[No.20] 米国の小売店舗は万引き防止のためAI監視カメラの導入を進める、人権団体は消費者保護を理由に廃止を求める
米国の主要小売店舗でAI監視カメラの導入が進んでいる。
店舗に設置された監視カメラの映像をAIで解析し、商品窃盗者の身元を特定する目的で使われる。
消費者が気付かないうちに普及が進み、今ではApple Storeなど大手小売店舗がAI監視カメラを導入している。
しかし、人権保護団体は、AI監視カメラは消費者の誤認逮捕につながるとして、小売店舗に対しシステムの使用を停止するよう求めている。
老舗デパート・メイシーズ
米国のデパートやスーパーマーケットでAI監視カメラの導入が進んでいる。老舗デパートであるMacy’sは、顔認識システムを導入していることを明らかにしている。
その理由として、犯罪組織が特定地域で商品窃盗を繰り返しており、これを抑止するためにAI監視カメラを利用すると説明している。
実際に、米国は昨年から治安が悪化しており、有名店舗で高級品を狙った窃盗事件が多発している。
アップルストアー
Appleは何も公表していないが、Apple StoreはAI監視カメラを導入し、商品窃盗を防止していることが判明した。
Appleとそのセキュリティ企業 Security Industry Specialistsは、消費者から顔認識システムに関し訴訟を受けている。
訴状によると、Appleは顔認識システムで窃盗者を特定したが、これはアルゴリズムのエラーで、別の人物がその人物になりすまして犯行を実行したことが判明した。
このため、消費者は誤認逮捕されたとしてAppleなどを提訴している。この訴訟が切っ掛けでAppleがAI監視カメラを導入していることが明らかになった。
セブンイレブンなど
この他に、コンビニ 7-Elevenは、オーストラリアの全店舗でAI監視カメラを導入している。
また、ハンバーガーチェインのMcDonald’sは2019年、注文受付カウンターで顔認識システムのプロトタイプの運用を開始した。
現在、マクドナルドは監視カメラで店舗内の顧客を撮影し、セキュリティを強化している。
一方で、AI監視カメラを使用しないと表明する企業も少なくない。
Starbucksは顔認識システムを利用しないことを明言しており、顧客のプライバシーを保護する方針を維持している。
多くの店舗が顔認識システムを導入
人権監視団体「Fight for the Future」は顔認識システムの利用状況をまとめ、これをデータベースとして公開している。
これによると、調査した53社のうち35社が顔認識システムを使っている。
消費者が気付かないうちに米国小売店で顔認識システムの普及が進み、全体の2/3がAI監視カメラを導入している。
現在、人権監視団体は小売店舗で顔認識システムの利用を停止するための活動を展開している。
反対する理由
人権監視団体がこの運動を展開する理由は消費者や店舗従業員の保護にある。
顔認識アルゴリズムは判定精度が十分でなく、システムは間違った判定を下すことが少なくない。
このため、Apple Storeのケースのように、消費者が誤認逮捕されることになる。また、顔認識システムは消費者の挙動を収集するためにも使われる。
AI監視カメラで消費者の店内での挙動を把握し、この情報を元にターゲット広告を配信する。更に、AI監視カメラは小売店舗従業員の仕事ぶりを監視する目的で使われ、アルゴリズムが動きを逐一モニターする。
警察は顔認識システムの使用を中止
顔認識システムの妥当性についての議論が始まり、全米の警察はその利用を禁止する方向に進んでいる。
サンフランシスコ市は、警察が顔認識技術を使うことを禁止した。これがトリガーとなり、対岸のオークランド市とバークレー市も顔認識技術の使用を禁止し、警察はこのシステムの使用を中止した。
この背後には政府がAIで市民を監視することへの漠然とした恐怖心があり、顔認識システム禁止の動きが全米に広がる勢いとなっている。
欧州と米国の動き
消費者はAIに対する漠然とした恐怖から、顔認識システムに過剰に反応していることも事実である。
AI監視カメラを正しく使うと、犯罪を抑止し、地域のセキュリティが向上する。このため、欧州委員会(European Commission)は、AI監視カメラについてその使用を認めている。
但し、AI監視カメラで顔認識システムが稼働していることを明示することを義務付けており、消費者への配慮を求めている。
米国も同様な方向に進んでおり、警察での使用禁止とは対照的に、小売店舗や企業でAI監視カメラの導入が進んでいる。