[No.274]GoogleのAI研究開発体制が激変、Demis HassabisはCEOをステップダウン、Jeff Deanは会社を去り新興企業を立ち上げ、Sergey BrinがGemini開発を指揮し首位の座を奪還か
Googleは8月5日、GoogleとGoogle DeepMindのAI組織を大幅に改定した。
AI研究部門Google DeepMindのDemis Hassabis(下の写真、イメージ、右側)はCEOのポジションを退き、会長と親会社Alphabetの最高科学責任者(Chief Scientist)となる。Googleの最高科学責任者Jeff Dean(左側)は会社を去り、スタートアップ企業を創設する。
トップブレインがAI開発の最前線から退き、Googleはフロンティアモデルの開発で苦境に立たされた。一方、Google創設者Sergey BrinがGeminiの開発を指揮すると言われており、首位の座を奪い返すことができるのか市場が注視している。

Demis HassabisはCEOをステップダウン
Demis HassabisはAI研究開発機関Google DeepMindのCEOの職を辞して、ハイレベルな観点からGoogleのAI研究開発を推進する任務を担う。
Hassabisの新たなミッションはAGIの開発とAIガバナンスの展開となる。また、Google DeepMind配下の新興企業「Isomorphic Labs」の責任者を継続する。
同社は、Hassabisらが開発したAlphaFoldをベースとする新薬開発の技術を開発しており、がん治療薬などの開発をターゲットとする。
Google DeepMindの責任者
Hassabisの後任にはGoogle DeepMindのCTOであったKoray KavukcuogluがSVP(上級副社長)として就任した。
KavukcuogluはGoogle DeepMindの日々のオペレーションを管轄し、GoogleのCEOであるSundar Pichaiにレポートする。
これからはKavukcuogluがフロンティアモデル「Gemini」の技術開発と製品化の指揮をとる。
Jeff DeanはGoogleを去る
Jeff Deanは27年間在籍したベテラン社員で、最高科学責任者として重要な技術を生み出してきた。
その代表が「MapReduce」で、検索サービスにおけるビッグデータ解析で使われてきた。
MapReduceは大規模なデータを並列化し、数多くのサーバで並列に実行するフレームワークとなる。また、Jeff DeanはAIプロセッサ「TPU」の発案者で、機械学習やAIモデルを高速で実行するために使われている。
Jeff Deanは「Discovery Loop」を創設
Jeff Deanは同僚三名とともにGoogleを去り、スタートアップ企業「Discovery Loop」を創設した。
Discovery Loopは公益法人(public benefit corporation)として創設され、Googleらが出資している。Discovery LoopはAIで研究開発を自動化する技術を開発する。
機械学習、エンジニアリング、新薬開発、サイエンスの分野を対象とし、新たな発見を生み出すことを目的とする。AIが人間に代わり研究プロセスを繰り返し実行することで、サイエンスを超高速で進化させる。
研究プロセスの繰り返し実行を「 発見のループ(Discovery Loop)」と呼び、これが社名となっている。

サイエンスにおける発見を自動化
Jeff DeanはAI開発における次のフロンティアは科学研究の方式を自動化することにあると考える。
科学研究は、仮説を設立し、それに基づき実験を行い、その結果を検証し、モデルを改良するプロセスとなる。人間の科学者がこのプロセスを繰り返すが、新発見を生み出すまでには長い時間を要す。
Discovery LoopはこのマニュアルのプロセスをAIエージェントで置き換え、数千のトライアルを並列に実行し、科学研究を超高速で進める。(下の写真、Discovery Loopの創設者、GoogleのAIブレインであった、左から、Oriol Vinyals、 Sanjay Ghemawat、Jeff Dean、Quoc Le)

研究対象領域
Discovery Loopはこのモデルを最初は機械学習(AI)の分野に応用する。
これは機械学習の研究をAIで高速化する。現在のニューラルネットワークはトランスフォーマに基づくアーキテクチャで、この技法を最適化する競争が進められている。
Discovery LoopはAIで機械学習の研究を自動化し、トランスフォーマに代わるアーキテクチャを探求する。
この研究が完成すると、次のステップは対象分野をサイエンスの領域に拡大する:
- 半導体設計:チップのデザインを自動化する。また半導体回路を最適化する
- バイオロジー:新薬の開発を高速で実行する
- マテリアル:太陽光発電パネルなど素材の開発を超並列で実行する
市場の反応はネガティブ
Googleが組織改定を発表した日に株価は5%下落し、ウォールストリートはこの発表にネガティブな反応を示した。
HassabisがGoogle DeepMindのCEOをステップダウンすることは、Geminiの開発が停滞することを意味し、GoogleはAI開発レースでトップ集団から離脱を余儀なくされると解釈された。
また、Googleのコア技術を支えてきたJeff Deanらが会社を去り、Discovery Loopを創設したことは、Google社内で長期レンジの基礎研究を進める環境が整っていないことを示唆している。

Sergey BrinがAI開発を指揮か
シリコンバレーで、Googleの共同創業者であるSergey Brin(上の写真、イメージ)が、Geminiの開発を監督・指揮するとの情報が広がっている。
Googleはフラッグシップモデル「Gemini 3.5 Pro」のリリースを延期し、未だに出荷の目途が立っていない。GoogleはOpenAIやAnthropicとの開発競争で後れを取っている現状が明らかになった。
Sergey Brinはこの状況に危機感を募らせ、自らが前面に立ちGemini部門を指揮すると言われている。
GoogleはAIレースでトップの座を奪い返すことができるか市場が注視している。

