[No.266]G7サミットでトランプ大統領に先端AIモデル「Mythos 5」の輸出規制撤回を求める厳しい意見が続出、欧州諸国は米国のAI政策に苛立ちを高める
トランプ政権は安全保障のリスクを理由に、Anthropicに「Fable 5」と「Mythos 5」の運用停止を命じた。
米国主要企業と同盟国はProject Glasswingで「Mythos 5」を使って基幹インフラのセキュリティを検証する作業を進めているが、このプロジェクトが停止に追い込まれた。G7サミットでは加盟国がトランプ大統領に輸出規制を撤廃することを強硬に求めた。
AI企業は米国が主導するフロンティアモデル検証のための国際組織を設立することを要請した。

G7サミット
フランス・エビアンで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)ではAIが重要なテーマとなった。
6月17日のワーキングランチで、G7首脳に加えAI企業のトップが出席し、AI輸出規制などが議論された(下の写真)。欧州を中心とするG7首脳はトランプ大統領に「Mythos 5」などフロンティアモデルの輸出規制撤廃を強く求めた。
AI企業のトップは国際間でフロンティアモデルに関するルールの設定が最重要プライオリティであることをトランプ大統領に訴えた。

輸出禁止の背景
商務省は6月12日、Anthropicに対し、非アメリカ人と国外組織がフロンティアモデル「Fable 5」と「Mythos 5」へアクセスすることを禁止することを命じた。
これが事実上の輸出規制となりヨーロッパやアジアでモデルへのアクセスが遮断された。
米国とグローバル社会はProject Glasswingにおいて、「Mythos 5」で基幹ソフトウェアの安全検証を進めてきたが、このプロジェクトは停止を余儀なくされた。
フランス:輸出規制撤回を強く求める
アメリカ「CNBC」やイギリス「Financial Times」など主要メディアはG7サミットにおけるAIに関する議論を一斉に報じた。
フランス、イギリス、EUは「Mythos 5」の出荷規制に関し、トランプ大統領に規制の撤回を求めた。その中で、フランスのマクロン首相が一番アグレッシブで、「Mythos 5」の輸出規制によりグローバル社会に課せられた課題は大きいとの認識を示し、AIモデルに関する共通のルールを制定すべきであると強く主張した。
トランプ政権が独断で輸出制限を実施する「キル・スイッチ」を持てば、米国のAI開発企業のビジネスが大打撃を受けると警告した。
イギリス:特例措置を求める
イギリスのスターマー首相はホワイトハウスへのロビー活動を進め、「Mythos 5」と「Fable 5」の輸出規制で例外事項を設けるよう要請した。
これに対し、トランプ政権は輸出規制に例外事項を設けることは論外で、G7加盟国がこれら先端モデルにアクセスすることはできないとした。
イギリス政府のAI部門は「UK AISI」はアメリカ商務省配下の「CAISI」と密接に「Fable 5」などフロンティアモデルの安全性を査定するプロジェクトを進めており、今回の輸出規制で両国の信頼関係が崩れた、トランプ政権に大きな不審を募らせている。
AI企業のトップが参加
6月17日のワーキングランチで、G7首脳に加えAI企業のトップが出席した。
主なメンバーは、Sam Altman (OpenAI)、Dario Amodei (Anthropic)、Demis Hassabis (Google DeepMind)の他に、Marc Benioff (Salesforce)、Alexandr Wang (Meta)、Arthur Mensch (Mistral AI)、及びAidan Gomez (Cohere)が加わった。(下の写真、トランプ大統領の右側にSam Altmanが、左側にDemis Hassabisが着席)

米国社会で議論が白熱
Fable 5とMythos 5の輸出規制指示について、反対派と賛成派が激しく主張を展開し、国論が二分されている。
規制反対派は、米国政府がジェイルブレイクを根拠に、両モデルの運用を停止させたことは過剰反応であると主張する。
一方、規制賛成派は、Anthropicは政府にAI規制を求めており、実際に、規制が実施されると、今度は規制緩和を求めるのは、一貫性が無いと主張する。しかし、米国の世論は規制反対派が優勢で、連邦政府に輸出管理令の根拠を明らかにするよう情報公開を求めている。
AI規制フレームワークの設立を要請
セッションでAI企業のトップはトランプ大統領に米国が主導するAI規制に関するフレームワーク「U.S.-Led Framework」の設立を求めた。
AnthropicのDario Amodeiはフロンティアモデルの出荷に関し、民主国家が分裂するのではなく、連携して行くことが最重要であると訴えた。
OpenAIのSam AltmanはAmodeiに同調し、G7加盟国にサイバー攻撃を防御するためのツールを提供すべきと主張した。GoogleのDemis Hassabisは、西側諸国が分裂すると、バイオテロやサイバーセキュリティで取り返しのつかないリスクに直面すると警戒した。
これら三氏は、米国が主導してモデルを評価する組織「Model Evaluation Forum」と技術標準化組織「Technical Standards Body」を設立することをトランプ大統領に要請した。(下の写真、マクロン大統領の右側にMarc Benioffが、左側にDario Amodeiが着席)

AIルール設定が最重要プライオリティ
トランプ政権の唐突で恣意的な輸出規制はグローバル社会に大きな混乱をもたらし、欧州諸国を中心に、米国政府のAI政策にフラストレーションを募らせた。
EU首脳は米国技術に依存する政策を見直し、これに代わる代替技術の模索を進めている。
混乱の原因は、なぜ「Mythos 5」と「Fable 5」の輸出が禁止されたのか、納得できる理由が示されていないことにある。AI運用に関するルールの欠如が最大の問題で、AI企業トップはフロンティアモデルの安全性評価と技術標準化を強く求めた。

