[No.223]トランプ大統領のAIアクションプランで米国AI産業が激変!!OpenAIはGPT-5を連邦政府に無償で提供、モデルをオープンソースとして公開
ホワイトハウスは2025年7月、AI基本政策「AIアクションプラン(AI Action Plan)」を公表し、トランプ大統領は三つの大統領令に署名した。
AIアクションプランと大統領令は三つの指針から構成され、AI開発の加速、インフラの整備、技術の標準化で、これを達成するためのアクション項目を規定する。OpenAIはAIアクションプランに沿って新たな事業戦略を相次いで発表した。
GPT-5を連邦政府に無償で提供し、モデルをオープンソースとして公開した。
米国AI企業はAIアクションプランに準拠するため事業戦略を大きく転換し、トランプ大統領の影響力の甚大さを映し出した。

AIアクションプランと大統領令
AIアクションプランはトランプ政権のAI基本政策を規定したもので、AI技術革新の加速、AI開発のためのインフラ整備、技術の標準化の三つの基軸からなる。
トランプ大統領はAI基本政策に関する三つの大統領令に署名し、米国政府の新たなAI政策が起動した。
AIアクションプランを制定した背景には中国との技術競争がある。トランプ政権はAI開発を1960年代の宇宙開発競争に例え、米国が勝利しなければならないとしている。

連邦政府にAI導入を指示
トランプ政権はAIアクションプランで連邦政府に最新のAIモデルを導入することを求めた。
AIによりワークフローを自動化し、内部プロセスを効率的に運用し、事務処理を軽減することを目的とする。これを受けて、General Services Administration (GSA)が連邦政府の窓口となり、このプログラムを実行する。
GSAは連邦政府の独立機関で物品やサービスの調達など総務の業務を担う。
OpenAIの新戦略
トランプ政権のAIアクションプランに沿って、OpenAIは8月6日、AIモデルを連邦政府に無償で提供することを発表した。
OpenAIはGSAと提携し「ChatGPT Enterprise」を来年一年間1ドルで提供する。ChatGPT Enterpriseは企業向けのライセンスで、チャットモードでAIモデルを使うサービスとなる。
OpenAIは最新モデル「GPT-5」をリリースしており、連邦政府はこのモデルを無償で使うことができる。OpenAIとしては、フリーミアムのモデルで、無償でChatGPTを導入し、その後、有償モデルに切り替える狙いがある。

AIモデルの安全基準
AIアクションプランは連邦政府がAIモデルを導入する際に守るべき安全基準を規定している。
AIモデルが安全基準に準拠していることを条件に導入を認める構造となる。具体的には、AIモデルは「Truth-Seeking(真実を探求)」し、「Ideological Neutrality(イデオロギーに中立)」であることが要件となる。前者は、モデルの出力が正確で事実に基づいており、意図的にミスリードしないことを規定する。
後者は、モデルが政治的にまた文化的に特定の方向に偏らないことを求めている。リベラルにバイアスするAIは「Woke AI」と呼ばれ、安全基準は中立なポジションを取ることを求めている。

調達規定の制定
大統領令は連邦政府がAIモデルを購入する際の調達規定「Procurement Rule」を制定することを求めている。
調達規定には上述の安全基準が含まれ、また、モデルのセーフティ規格などが設定される。大統領令は行政管理予算局(Office of Management and Budget 、OMB)に対し、具体的な調達規定を120日以内(2025年11月まで)に制定することを求めている。
更に、国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology 、NIST)に対して、モデルの安全性を評価する技法の開発を求めている。
これは国家安全保障の観点から、CBRNE(下の写真)やサイバー攻撃に関する危険性評価技法の開発を求めている。

OpenAIがテストケース
OpenAIがAIアクションプランに沿って連邦政府にAIモデルを提供する最初のケースとなり、業界から注目されている。
OpenAIはOMBにより制定される調達規定に従って安全なモデルを納入することが求められる。
具体的には、OpenAIは調達規定に従ってAIモデルを検証し、その結果をドキュメントにまとめて提出し、OMBによる評価を受けるプロセスとなる。
規制緩和と安全規格
トランプ政権はAIモデルの安全評価に関する規制を緩和したが、実際には独自のルールに従って安全性を確認する作業が求められる。
OMBの調達規定がリリースされるまでは安全評価のプロセスは不明であるが、バイデン政権から制約が大きく緩和されるわけでは無い。
AIモデルの出力精度が問われ、CBRNEやサイバー攻撃などモデルの安全性を検証する義務が課される。
オープンソース
AIアクションプランはAI開発企業にモデルをオープンソースとして公開することを求めている。
スタートアップ企業やアカデミアはオープンソースを使うことで研究開発を加速する。また、オープンソースは米国の価値を内包するシステムで、これをグローバルに展開することで、”アメリカンAI”の普及を目指す。
具体的には、ビジネスや基礎研究における国際標準規格をアメリカの技術で構築し、トランプ政権はグローバルな覇権を握ることを目論んでいる。
OpenAI gpt-oss
これに呼応してOpenAIは8月5日、オープンソースモデル「gpt-oss」を公開した。
OpenAIはこれを「Open-Weight Reasoning Model (オープンウェイトの推論モデル)」と呼び、「gpt-oss-120b」と「gpt-oss-20b」の二つのモデルを投入した。オープンソースであるが性能は「o3」レベルで高機能なオープンソースとなる。
OpenAIはビジネスモデルを大転換し、クローズドソースとオープンソースのハイブリッドな事業戦略を取る。

トランプ政権のAI規制
OpenAIに続き、GoogleとAnthropicも行政管理予算局のベンダーリストに追加され、AIモデルを連邦政府に供給することが認められた。
これら企業はAIモデルを倫理的に運用することを誓約し、また、連邦政府の安全基準に準拠することを確約した。OMBのルールブックが安全審査のガイドラインとなり、これに準拠することが求められる。
OMBのルールブックは120日後にリリースされる予定で、これが米国の事実上の安全基準となり、トランプ政権下でAI規制の条件が確定する。