[No.222]OpenAIは最新モデル「GPT-5」を投入、AGIではなくコスパを極めた先端モデル、コーディングとAIエージェントがキラーアプリ
OpenAI は8月7日、最新モデル「GPT-5」をリリースした。
GPT-5は高度な機能を持つAGIではなく、コストパフォーマンスを重視する実用的なモデルとなった。GPT-5は言語モデルと推論モデルが統合され、統合インテリジェンス(Unified Intelligence)を構成する。
GPT-5は推論機能が大きく進化し、コーディングとエージェント機能が突出したモデルとなる。
コーディング機能は業界トップの性能を持ち、プロンプトだけでソフトウェアを開発でき、GPT-5がオンデマンドでアイディアを製品にする。

GPT-5の概要
GPT-5はOpenAIのフラッグシップモデルで高度な機能を搭載し業界トップの性能を実現した。
アーキテクチャの観点からはGPT-5は単一のシステム「Unified System」でプロンプトの内容に応じて最適なモジュールが選択され回答を生成する。
具体的には、ChatGPTインターフェイス(ブラウザー)においては、ルーター(Router)が入力されたプロンプトを解析し、「GPT-5」か「GPT-5 Thinking」のモジュールを選択する。
前者はチャットモデルで高速で回答を生成し、後者は推論モデルで思考を重ねて回答を生成する。
モデルの選択
実際に、GPT-5を使う際にマニュアルでモデルを選択するオプションが提供されている(下の写真)。
ChatGPTの初期画面で「GPT-5」か「GPT-5 Thinking」を選択する。使ってみると、GPT-5はチャットモードで瞬時に回答を生成する。
GPT-5 Thinkingは考察を重ね高品質な回答を生成する。GPT-5 Thinkingを標準的に使っているが、使用量に制限があり(200メッセージ/週、Plusユーザ)、上限に達するとGPT-5 Thinkingの小型モデル(Mini)にダウングレードされるので注意を要する。

開発者向けの機能
OpenAIは開発者向けにAPIを公開しており、プログラムからAPI経由でGPT-5の機能を呼び出す。
上述のChatGPTのインターフェイスとは異なり、開発者向けには四種類のモデルを提供している。推論モデルがベースで三つのサイズから成り(下の写真)インテリジェンスを提供する。
APIはモデルの規模で区分され、標準モデル「gpt-5」から中型モデル「gpt-5-mini」から小型モデル「gpt-5-nano」となる。また、GPT-5チャットモードは「gpt-5-chat」として提供されている。
プログラムからこれらのAPIにアクセスしGPT-5の機能を利用する。

パフォーマンス
OpenAIはGPT-5の性能を公表し前世代モデル「GPT-4o」や「o3」から数学や科学やコーディングの性能が大きく向上したことをアピールした。
一方、OpenAIはGPT-5と他社製品の比較については発表しておらず、業界での位置づけを掴むことができない。一方、AI解析企業が主要各社のベンチマーク結果を統合して公開している(下のグラフ)。
これによるとGPT-5はxAI Grok 4を抜いてトップの成績となった。これに、Google Gemini 2.5 ProとAlibaba Qwen 3が追随する構図となる。

コスト
OpenAIはGPT-5の利用価格を低く設定し業界を驚かせた。
GPT-5は業界でトップの性能を持つが、価格は極めて低く設定され(下の写真、API使用料金、100万トークン当たりの価格)、コストパフォーマンスを重視した製品となった。コーディング機能においてはAnthropic Claude 4.1が対抗機種となるが、GPT-5の価格はこのモデルの1/10に設定されている。

コーディング
OpenAIは発表イベントにおいて、GPT-5は極めて高度なコーディング機能を持つことをデモで実演した。
GPT-5にメールアプリを制作するよう指示すると、AIがプログラミングを実行し、メールアプリを開発した。
プロンプトでメールアプリのワイヤーフレーム(下の写真)を入力し、「このデザインに従ってメールアプリを開発」と指示すると、GPT-5はコーディングを開始した。

ソフトウェア・オンデマンド
ここでは、一番人気のAI開発環境「Cursor」が使われ、この背後でGPT-5がプログラミングを実行した。
上述のプロンプトの指示に従って、メールアプリが生成された(下の写真)。GPT-5はシンプルなモデルだけでなく、フロントエンドとバックエンドにまたがる、複雑なプログラムを生成することができることが示された。
GPT-5は言葉だけでアプリを生成することができ、Sam Altmanはこの手法を「Software on Demand(ソフトウェア・オンデマンド)」と命名した。

エージェント
GPT-5はエージェント機能が拡張されベンチマークで高い性能を示した。
エージェント機能においては、インストラクションに従う機能やツールを使う機能が格段に向上した。OpenAIはエージェントモデル「GPT Agent」をリリースし利用が広がっている。
また、スタートアップ企業はGPT-5をエージェントのエンジンとして採用し高度なモデルを開発している。(下の写真、AIエージェントのトップ企業Manusの事例、背後でGPT-5が稼働している)

進化を感じにくい製品
GPT-5はコーディングやエージェントの機能が格段に進化しこれらの製品のエンジンとして利用が急拡大している。
また、GPT-5はバイオサイエンスやファイナンスにおけるバックボーンとなり新薬開発などで活躍が期待される。GPT-5はPhDクラスのインテリジェンスを持ち、研究者やエンジニアにとって同僚のような存在となる。
しかし、一般消費者はコーディングやバイオサイエンスの研究とは縁遠く、GPT-5に大きなメリットを感じることができないことも事実である。
GPT-5は産業向けAIシステムとしての色彩が濃厚になり、一般消費者から遠ざかりつつある。