[No.39] メタバースで都市開発が進む!!仮想社会で新たな経済モデルが生まれる、購入した土地に施設を建設し事業を興す
メタバースで都市開発が始まった(下の写真)。
メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここに現実社会のように街が生まれている。メタバースで土地を購入し、施設を建設し、ビジネスを興す。テーマパークを建設しアドベンチャーゲームを始める。音楽ホールを造るとコンサートを開催できる。
現実社会のデジタルツインともいえる仮想都市で、ビジネスが始まり、メタバースの経済構想が見えてきた。
仮想都市の開発
3D仮想空間で都市開発を手掛けているのは Sandbox という新興企業で、メタバースで新しい事業モデルを生み出している。
Sandboxは、仮想社会のゲームを通して、メタバースを開発する手法を取る。個人や企業は、仮想社会でゲームやデジタルアセットを開発し、これらを販売することで収益を上げるモデルとなる。
メガシティ
メタバースに大都市「Megacities」が建設され、企業や著名人や個人が土地を購入し、事業を始めている。
Sandbox にログインしてマップを見ると、メガシティの見取り図が示される(下の写真)。
土地は区画で仕切られ、その大きさは96×96フィートとなる。
この区画を単一、または、複数購入することができる。大地主はアイコンで示されている。
2021年には、12,000区画の土地が販売され、累計で8,000万ドルの売り上げとなっている。Sandbox全体では、166,464区画整備され、累計で5億ドルの資産を保有していることになる。
自宅を建設
土地を購入すると、ここに自宅を建てて、生活することができる。家屋のデザインを決め、提供されているツールで建物を建設する(下の写真)。
屋内には、家具や調度品を配置し、生活できる環境を整える。現実社会と同じように、不動産が値上がりすれば、売って利益を得ることができる。また、著名人の住宅の近くに土地を買えば、値上がりする可能性が高いとも言われる。
事業モデル
人気ラッパーのスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)は、メタバースに土地を買い(一つ上上の写真、中央部)、ここに大邸宅を建設した(下の写真)。
庭には広いプールがあり、愛用しているクルマが駐車されている。ここに友人を集めてパーティーを開くことができる。
また、コンサート会場としてライブイベントを開催できる。実際に、スヌープ・ドッグはライブイベントを開催する予定で、そのチケット「Private Party Pass」の販売を開始した。また、スヌープ・ドッグのアバターや、愛用しているクラッシックカーは、デジタルアセットとして販売されている。
このように、メタバースでは、土地への投資、イベントの開催、デジタルアセットの販売で、事業を運営する。
メタバース開発ツール
購買した土地に建物を建設し、ビジネスを興すためには、Sandboxが提供しているツールを利用する。
これは、「VoxEdit」と「Game Maker」と呼ばれ、コーディングすることなく、オブジェクトを生成することができる。エンジニアでなくても誰でも使える点に特徴がある。
デジタルアセットの開発
VoxEditはデジタルアセット「ASSET」を生成するツール(下の写真)。
デジタルアセットとは、仮想のオブジェクトで、アバターや衣服などが含まれる。具体的には、ASSETは4つのクラスから構成され、
・Entity (人間や動物などのキャラクタ)
・Equipment (ゲームで使う刀などの武器)
・Wearable (シャツやジーンズなどの衣服)
・Art (アートワークなどの装飾品)
となる。
生成したアセットはNFT(Non-Fungible Token)というトークンに変換される。
NFTとはコンテンツの所有者を証明するトークンで、コンテンツの所有権を示す証文となる。
これにより、コンテンツの取引が可能となり、メタバースでNFT取引がブームとなっている。NFTに変換されたデジタルアセットは、Sandboxのマーケット「Marketplace」で取引される。
ゲームの開発
Game Makerはメタバースで様々なアクティビティ「Experiences」を生成するツール(下の写真)。
アクティビティの中心がゲームで、Game Makerは生成したASSETを使ってゲームを作成する。また、ゲームの他に、NFTを販売するギャラリー「NFT Gallery」や、住民が集う施設「Social Hub」を作成するためにも利用する。また、自宅を建設するときもGame Makerを使う。
ゲームの種類
既に多くのゲームが開発されプレーされている(下の写真)。
ゲームは二種類に分類され、アドベンチャーゲーム「Action Adventure」とパズルゲーム「Puzzle Games」となる。前者は敵と戦いながら目的を達するゲームで、後者はパズルを解きながら謎を解明するゲーム。これらのゲームは無料でプレーできるが、ゲーム内でデジタルアセットを購買するモデルとなる。
デジタルアセットの販売
デジタルアセットの販売サイト「Marketplaces」には、数多くのNFTが掲載され、取引されている。これらはVoxEditで生成されたもので、人気キャラクターやグッズを中心に売買されている。
メタバース向けのデジタルアセットを開発しているLululandは、ゲーム内で使うWearablesを販売している。白色のスニーカー「White Angel」は777.00 SANDで販売されている。ドルに換算すると$3,760.68となる。「SAND」とはSandboxが開発した固有の暗号通貨で、今日の交換レートは1 SAND = 4.81ドルとなる。
クリエーター経済
これらのゲームやデジタルアセットは Sandbox が提供するツールで開発された。ツールはNoCode(ノーコード開発プラットフォーム)で、プログラミングの知識なしに、誰でも簡単に使える仕様となっている。このため、クリエーターやデザイナーやアーティストなどが(下の写真)、これらのツールを使ってゲームを開発し、デジタルアセットを生成している。
クリエーターたちはメタバースで事業を興し、収入を得る手段を得た。これは、クリエーター経済「Creator Economy」と呼ばれ、メタバースの新しい経済構想として注目されている。
Sandboxのシステム構成
Sandboxは、ブロックチェイン「Ethereum」に構築された仮想社会。
このプラットフォームで、土地やデジタルアセットが売買され、ゲームがプレーされる構造となる。
「SAND」はSandboxが開発した暗号通貨で、メタバース内での決済で使われる。「LAND」はメタバースの一部で、「ASSET」はユーザが生成したオブジェクトで、「GAME」はこれを組み合わせたものとなる。
これらはEthereumで稼働するトークンで、Sandboxはブロックチェインを基盤とするシステムと位置付けられる。現在のSandboxはアルファ版で、2022年第一四半期に正式製品が公開される。
ハイプかリアルか
メタバースで土地が高値で取引され、アートギャラリーでNFTの販売が好調である。
インターネットにメタバース経済圏が出現し、新しいビジネスが続々と立ち上がっている。ベンチャーキャピタルは強気の姿勢で投資を進めている。
一方、ウォールストリートは、成り行きをウォッチしているが、慎重なポジションを取っている。メタバースはハイプで終わるのか、それとも、巨大ビジネスとして開花するのか、2022年は節目の年となる。