[No.62]MetaはAIで本人そっくりのアバターを生成する技法を開発、また「アバター・ストアー」を開設しアバター向けに高級ブランド品を販売
MetaはリアリスティックなアバターをAIで生成する技法を公開した。
スマホカメラで撮影した画像をもとに、AIが写真のようにリアルな3Dモデルを生成する。
また、Metaは「アバター・ストアー」を開設することを発表し、アバター向けのファッションアイテムを販売する(下の写真)。
ここには有名ブランドの衣料品が揃っており、メタバースでお洒落を楽しむことができる。
Metaのアバター開発の歴史
Metaは、早くから、VR向けに3Dアバターの開発を進めてきた。
このアバターは「Codec Avatars」と呼ばれる種類で、人間の顔の形状や表面の質感を忠実に再現し、リアリスティックな3Dモデルとなる。特殊なカメラ「MUGSY」を使い(下の写真左側)、被写体の顔を異なる方向から撮影し(右側)、これらを合成して3Dモデルを生成する。
MUGSYは171台のカメラから構成され、被写体を異なる方向から撮影する。
スマホでアバターを制作
先月、MetaのAI研究所である「Reality Labs」は、スマホでリアリスティックな3Dアバターを制作する技法を公開した。
特殊カメラを使う必要はなく、iPhoneで顔を撮影し(下の写真左側)、このデータを元にAIが、高精度な3Dモデルを生成する(右端)。
今まではスタジオで特殊カメラを使ってアバターを制作していたが、スマホで手軽に高精度な3Dモデルを生成できるようになった。
AIモデルの概要
AIでアバターを生成するが、その手順は次のようになる。
最初に、ベースモデル「Universal Prior Model」を生成する(下のグラフィックス、左側)。
ベースモデルの生成では、多数の顔写真を教育データとし、アルゴリズムは顔の構造とその表情を学習する。
具体的には、上述の専用カメラMUGSYを使い、255人の顔を25方向から撮影し、その際に、被写体は65の表情を造る。
これらの顔写真から、アルゴリズムは人間の顔の構造とその表情を学習する。
AIモデルでアバターを生成
次に、このベースモデルを使って、利用者のアバターを生成する。
スマホカメラを使い、顔を異なる方向から撮影し、これをベースモデルに入力する(上のグラフィックス、中央)。
アルゴリズムは顔の構造とその表情を学習しており、数枚の顔写真から高精度な3Dアバターを生成する。
更に、スマホカメラで異なる表情の顔写真を撮影すると、アバターの品質を大きく向上させることができる(上のグラフィックス、右側)。
印象型アバター
Zuckerbergは、これに先立ち、二種類のアバターを開発していることを明らかにした。これらは、「印象型アバター(Expressionist Avatar)」と「現実型アバター(Realistic Avatar)」と呼ばれる。
前者はアバターをアニメのキャラクターとして生成する方式で、利用者の顔の表情をグラフィカルに再現する。既に、VRゲームやオンライン会議(下の写真)などで使われている。
現実型アバター
現実型アバターは、利用者の顔をビデオ撮影したように、リアリスティックに生成する。
これは特殊カメラを使って生成されてきたが、上述の手法を使うと、iPhoneカメラで誰でも手軽に作れるようになった。(下の写真、左端は入力した写真で、その他は生成されたアバター。中央はアバターの深度を表示)。
但し、メガネをかけたアバターを高精度で生成できないなど、制限事項があり、完成までにはもう少し時間を要す。
アバター・ストアーを開設
今週、MetaのCEOであるMark Zuckerbergは、「アバター・ストアー(Avatars Store)」を開設することを発表した。
アバター・ストアーとはアバター向けのファッションハウスで、ここで洋服を買って、自分のアバターに着せる(下の写真)。
FacebookとInstagramとMessengerで、プロフィール写真の代わりに、3Dアバターを使うことができ、ストアーで洋服を買って華やかなアバターを生成する。
また、メタバースでは、本人に代わりアバターでお洒落を楽しむことができる。アバター・ストアーのモデルはMark Zuckerbergとファッション担当のEva Chenが務めている。
三つの高級ブランド
アバター・ストアーは有名ブランドのファッションアイテムを販売する。
これを買って自分のアバターに着せ、メタバースでお洒落な生活を楽しむ。
三つの高級ブランド、「バレンシアガ(Balenciaga)」、「プラダ(Prada)」、「トムブラウン(Thom Browne)」が公開された。
- バレンシアガはフランス・パリに拠点を置くファッションハウスで、規格にとらわれず、常に先進的なファッションを生みだしてきた。個人にフィットしたファッションデザインである、オートクチュール(haute couture)というコンセプトを生み出したことで有名。アバター・ストアーでは、モトクロス・レザー(motocross leather)スタイルを公開した(上の写真左端)。
- プラダはイタリア・ミラノに拠点を置く高級ファッションブランドで、ハンドバッグやシューズを販売する。ファッションでは既製品であるプレタポルテ(prêt-à-porter)を専門とする。アバター・ストアーでは、スポーツ・ファッションブランド「Linea Rossa」を公開(上の写真左から三番目)。Zuckerbergは「上から下までプラダを着るのは勇気がいるが、メタバースならこれができそう」と述べている。
- トムブラウンはアメリカ・ニューヨークに拠点を置くファッションブランドで、スポーティなブレザーなどを販売する。アバター・ストアーでは、四本のストライプが入ったジャケットを公開(上の写真右から二番目)。Zuckerbergは、「実社会でジャケットを着ることはないが、メタバースではトムブランを選ぶ」としている。