[No.18] Googleはスマホ最新モデル「Pixel 6」を発表、自社開発プロセッサ「Tensor SoC」を搭載し超高速AIマシンに進化

Googleは8月2日、スマホ最新モデル「Pixel 6」を発表した(下の写真)。

Googleは独自でスマホ向けプロセッサ「Tensor SoC」を開発した。
名称が示している通り、これはAI処理に特化したプロセッサで、スマホはAIマシンに進化した。

​Googleはスマホ向けに様々なAIシステムを開発してきたがプロセッサ性能が限界に達し、今回、独自にプロセッサを開発し、性能を大幅にアップグレードした。

出典: Google

Pixel 6の概要

このシリーズは「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」の二つのモデルから成り、今年の秋から出荷が始まる。
製品価格やハードウェア仕様など詳細情報は公表されていない。

​発表のポイントは高速AIプロセッサで、Googleはスマホの機能をAIで拡充する戦略を取る。
これにより、AIがカメラの性能を大幅に機能アップする。また、AIがリアルタイムの通訳となり、異なる言語で会話できる。

​更に、最新の基本ソフト「Android 12」を搭載し、カラーデザインが洗練されユーザインターフェイスが大幅に改善された。

スマホ向けプロセッサ

Googleはスマホ向けのプロセッサ「Tensor SoC」(下の写真)を独自で開発した。
SoCとは「System on a Chip」の略で基本ソフトを稼働させるメインのプロセッサとなる。

今までGoogleは、半導体企業QualcommからSoC (Snapdragon)を調達してきたが、Pixel 6向けにはこれを独自で開発した。
Tensorという名称が示すように、AI処理に重点を置いたプロセッサ構成となる。

​一方、SoCを構成するユニットとして、CPU、GPU、5G Modemなどがあるが、Googleはこれらを独自で開発したのかどうかについては公表していない。(米国メディアはSoCのベースをSamsungからライセンスを受け、GoogleはAIプロセッサの部分を開発したと推測している。)

出典: Google

カメラと画像処理

Googleはカメラで撮影したデータをAIで処理して写真やビデオを生成する手法を取る。

​これは「Computational Photography」と呼ばれ、カメラのセンサーが捉えたイメージをAIで解析しダイナミックレンジの広い画像「HDR」を生成する。

​また、暗闇の中でもフラッシュや三脚を使わないで鮮明な写真を生成する技術「Night Sight」を開発してきた。
このプロセスで大規模なAI計算が発生し、これをTensor SoCが担う。

​また、Pixel 6ではカメラと関連センサーは本体に収まらず、帯状のデバイス「Camara Bar」に格納される(先頭の写真、黒色の長方形の部分)。

言語処理

AI機能のもう一つの柱は言語処理で言語モデルが言葉を理解してユーザとのインターフェイスとなる。

「Google Assistant」が人間の秘書のように言葉を理解してタスクを実行する。
​また、AIアプリ「Recorder」は録音した言葉をテキストに変換する機能を持つ(下の写真)。

​会議での発言を録音し(左端)、Recorderがそれをテキストに変換し(中央)、議事録を作成する。
後日、議事録を検索して特定の発言を見つけることができる(右端)。

​Pixel 6はこれをもう一歩すすめ、同時通訳機能が登場した。
​Pixel 6のTensor SoCで翻訳プロセスが実行され、クラウドを経ることなく、デバイス上でリアルタイムに実行される。

出典: Google

Material You

Googleは開発者会議Google I/Oで基本ソフトの最新モデル「Android 12」と新たなデザインコンセプト「Material You」(下の写真)を発表した。

Android 12はMaterial Youを搭載する最初の基本ソフトでPixel 6でこれを製品として提供する。

​Material Youは色をベースとしたシンプルなデザインで、機能性と個人の個性を追求したインターフェイスとなる。

出典: Google

Material Youを使ってみると

既に、Android 12のベータ版が公開されており、Material Youを使うことができる(下の写真)。

​Material Youでは基本色調「Basic Color」を設定すると画面のコンポーネントがその色となる。
例えば、基本色調をブルーに設定すると(左端)、画面のボタンやアイコンの色がブルーに (中央)なる。

また、ブラウンに設定するとその色を基調としたデザインとなる(右端)。

​更に、Material Youではボタンの形状が丸みを帯び、サイズも大きくなり、優しいイメージに進化した。
​Pixel 4でAndroid 12のMaterial Youを使っているが、タッチしやすく温かみを感じるインターフェイスとなった。

出典: VentureClef

スマホハイエンド市場への挑戦

Googleは2016年10月、Pixelを発表しスマホ事業に参入し、Pixel 6は第六世代のモデルとなる。

Pixelシリーズは一貫してAIでスマホを構成する戦略を取り、Googleのコア技術である画像解析と言語モデルをスマホに応用してきた。

Google PixelのカメラはAIで構成され、世界でトップレベルの高品質な画像を生成してきた。
​しかし、近年ではApple iPhoneの機能アップが著しく、Pixelはスマホ競争から取り残されている。

​Pixel 6はプロセッサを大幅にアップグレードし、再び、ハイエンド市場でシェア拡大を狙っている。