[No.148]「Gemini」の政治理念は過度にリベラルに偏向?Googleは生成AIのイメージ生成機能を停止、モデルは歴史上の事実とは異なる画像を出力、倫理的なAIを開発する能力が問われている
生成AI最新モデル「Gemini」はイメージ生成精度に重大な問題があり、Googleはこの機能を停止した。
Geminiはテキストでイメージを生成する機能を持ち、プロンプトに従って画像を出力する(下の写真)。しかし、Geminiは史実とは異なるイメージを生成し、モデルに対する信頼が揺らいでいる。
また、Geminiの政治理念は過度にリベラルに偏向しているとの批判を受けている。
Geminiが生成した画像:中世のイギリス国王
Geminiが歴史的事実とは異なるイメージを生成する問題はユーザが見つけ、その画像がソーシャルネットワークで拡散し、米国で議論が広がっている。
Geminiに歴史に忠実にイメージを生成するよう指示すると、事実とは異なる画像を生成する。「中世のイギリス国王を史実に沿って描写」と指示すると、Geminiは「歴史的に正確で公平にイメージを生成した」とのコメントを添え、画像を出力(下の写真)。
しかし、イギリス国王が黒人や女性やアメリカ先住民として描かれており、モデルに重大な欠陥がある。
Geminiが生成した画像:アメリカ建国の父
Geminiが生成するイメージは史実と異なるだけでなく、極度にリベラルに偏っていることが問題視されている。
「アメリカ建国の父」を描くよう指示すると、Geminiは、白人だけでなく、黒人、アメリカ先住民、アジア人を描きだす(下の写真)。アメリカ建国の父とはアメリカ独立宣言に署名した政治的指導者で、ジョージ・ワシントンなどであるが、Geminiは独自の発想で特異な画像を出力する。
白人の貢献が軽視されていると指摘される。
Googleの釈明
これに対しGoogleは、Geminiに問題があることを認め、なぜこの問題が発生したのかを説明した。
Geminiのイメージ生成機能は「Imagen 2」というモデルを使っており、指示されたテキストに従って画像を生成する。Googleはモデルの開発で、暴力や性的表現を抑止し、また、人種差別なく公平に人物を描くようアルゴリズムを最適化した。
しかし、この過程でGeminiは公平性を過度に重視し、プロンプトに従わないで独自の解釈でイメージを生成するようになった。
具体的には、
- バイアス抑止:モデルは人種差別などのバイアスを抑止するため、史実に反してでも、多様な人種を描き出す
- プロンプト:モデルはバイアスに関し過度に慎重となり、特定のプロンプトへの回答を拒絶するようになった
安全性検証チーム
Googleはモデルを再度教育し、数週間以内にイメージ生成機能を再開するとしている。
実際に、GoogleはRed Teaming Teamを構築し、このチームがモデルの安全性やバイアスを検証し、問題の解決を進めている。
Imagen 2とは
Imagen 2は第二世代のイメージ生成モデルで、テキストで指示された内容に従って画像を生成する(下の写真)。
「ディフュージョン(Diffusion)」という技法を使っており、高品質で写真撮影したようにリアルな画像を生み出す。Imagen 2はGeminiに統合され、プロンプトに従ってイメージを出力する。
また、Imagen 2はAIクラウド「Vertex AI」で公開されており、APIを使ってアプリを開発する。
前述の通り、現在Imagen 2の機能は停止されている。
政治理念はリベラルに偏向
Geminiの問題はアメリカ社会で大きな論争に発展している。
Geminiはアメリカ建国の父を黒人やアメリカ先住民などと解釈し、アメリカ保守層は白人が国の基礎を築いた史実を歪曲していると指摘する。イメージだけでなく、Geminiはテキストの生成においても、政治的な理念はリベラルに偏向していると主張し、Googleに中立な立場を取るよう求めている。
Geminiの問題は、生成AIが倫理的であるために準拠する基本理念を誰が決定するのか、重大な課題を内包している。