[No.115]ChatGPTブームの終焉か、利用者数が減少に転じる、生成AIの開発競争が激化し他の言語モデルへ人気が移る
OpenAIが開発したChatGPTの人気が陰り始めた。
AIブームを引き起こしたChatGPTであるが、その熱狂が冷め、利用者数が減少に転じた。
人気が頭打ちになった理由について様々な解釈があるが、開発競争が激化し、高機能なモデルがリリースされ、ChatGPTの性能が相対的に後退したことが指摘される。
生成AIの選択肢が広がり、消費者や企業は最適なモデルを選択できるようになった。
利用者数の減少
ChatGPTは2022年11月末に公開され、一か月間で利用者数が1億人を突破し、最速の成長速度をマークした。
しかし、その成長は鈍化し、2023年6月は前月と比べ利用者数が10%程度減少した。
米国のウェブトラフィック調査会社などが報告している。
ChatGPTは世界最多の利用者を保持しているが、その成長が止まったことで、生成AIの市場構成が大きく変わる。
ChatGPTとは
ChatGPTは新興企業OpenAIが開発した生成AIで、サイトにアクセスして無料で使うことができる。
利用者が直接チャットボットに触れることができ、言語モデルの実力を実感し、AIに対する興味が沸騰した。
高度なAIと会話するという新鮮なインターフェイスにより、米国内で急成長を遂げたが、今では、米国外の利用者数が圧倒的に多い。
企業はChatGPTの使用を制限
ChatGPTの利用者数が減少した理由として、生成AIが内包する危険性がある。
企業はChatGPTが機密情報をリークすることを懸念し、社内での利用を制限している。
AmazonはChatGPTを業務で使うことを禁止した。
社員はChatGPTをプログラムのコーディングで使っているという実態が明らかになった。
社員はChatGPTに開発中のプログラムを入力、AIがこれをデバッグし、ロジックを改良する(下の写真)。
しかし、ChatGPTは入力されたコードを学習し、これを社外の利用者に出力する危険性がある。
特に、コードが開発中の先進技術を含んでいれば、情報がリークした際の被害は甚大となる。
著作権侵害で訴訟される
OpenAIはChatGPTが著作権を侵害しているとして、相次いで訴訟された。
OpenAIがChatGPTのアルゴリズムを教育した際に、書籍など著作物が使われ、AIが出力する内容が著作物のサマリーを含むなどの問題が指摘されている。
このため、ChatGPTが出力したコンテンツをビジネスで利用すると、著作権を侵害する危険性を含んでおり、企業はこれを懸念して生成AIをビジネスのプロセスに組み込むことを制限している。
米国は生成AIの規制に向かう
更に、米国政府はAI規制法を導入する方向に進み、生成AIが出力するデータの安全性が問われている。
ChatGPTがヘイトスピーチや差別発言をしないよう、OpenAIはガードレールを導入し、有害なコンテンツをフィルタリングしている。
このため、現在のChatGPTは優等生で、安全なコンテンツだけを生成する。
ChatGPTは安全であるが、利用者の一部は物足りなさを感じている。
自由な表現を求める利用者にとっては、ChatGPTは魅力を失った。
多彩な生成AIが生まれている
ChatGPTの利用者数は減少しているが、Microsoft BingやGoogle Bardの利用者数は上昇している。
Microsoft Bingは検索エンジンにOpenAIの最新モデル「GPT-4」を実装し、かつ、最新のデータでアルゴリズムを教育している。
ChatGPTは2021年9月までのデータで教育されており、最新の情報を回答することはできない。
また、GoogleはChatGPTに対抗して「Bard」を投入し、利用者数を伸ばしている。
Bardは最新の言語モデル「PaLM 2」をエンジンとし、ChatGPTの性能を凌駕するとアピールしている。
生成AIの多様化
実際に、ChatGPTを使うと他のモデルと比べて性能や機能のギャップを実感する。
Microsoft Bing(GPT-4)やGoogle Bardが進化し、相対的にChatGPTが後退した構図となる。
また、スタートアップ企業からは、多彩なキャラクターを持つ生成AIが登場している。
巨大テックの生成AIは倫理的な設計であるが、新興企業は消費者の嗜好に応え、ユニークなモデルを投入している。
必ずしも安全なモデルとは言えないが、自由な発言を好む米国の消費者にアピールしている。
生成AIの開発は多様化し、市場はChatGPT一強の時代から、郡雄割拠の状況を呈している。