[No.227]ソフトウェアの50%はAIエージェントがコーディング!!水面下で進むプログラム開発の自動化、エンジニアの雇用が深刻な社会問題となる
米国企業はプログラム開発でAIエージェントを投入し自動化を進めている。
開発されるプログラムの50%の部分をAIエージェントがコーディングする。AIコーディング技術は、プログラム開発を支援するモデルから、ソフトウェア開発の一連のプロセスを実行するモデルがあり、その機能が急速に進化している。
企業はAIコーディングの導入を進め、プログラム開発の多くの部分をAIエージェントが実行する。
このため企業はエンジニアの採用を控え、雇用問題が深刻な課題となっている。

AIコーディング技術
プログラムを開発するAIコーディング技術が急速に進化し、企業は最新モデルを導入し、ソフトウェア開発を自動化するペースを速めている。
AIコーディングは自動的にプログラムを開発する機能を持つが、その機能は二つに分類される。コーディング・エージェントはプログラム開発をアシストする機能を持ち、コーディング作業を効率化する。
一方、エンジニアリング・エージェントは高度に自律的なモデルで、人間に代わりソフトウェア開発を実行する。
企業はAIコーディングの導入を進める
この傾向はフィンテック企業で顕著で、プログラム開発の多くの部分をAIコーディングが実行する。
サンフランシスコに拠点を置くフィンテック企業CoinbaseはAIコーディングの利用状況を明らかにした(下のグラフ)。プログラム開発においてAIでコーディングした割合が40%を超え、今年4月からその割合が倍増した。
ソフトウェア開発の自動化が急ピッチですすんでいる実態が明らかになった。
創設者のBrian Armstrongは10月までにこの割合を50%にすると述べており、プログラム開発のオートメーション化が急速に展開される。

巨大テックも自動化を進める
巨大テックもソフトウェア開発の自動化を積極的に進めている。
GoogleのSundar Pichaiは決算発表で、新規プログラムの25%の部分がAIで開発されていることを明らかにした。この発表は昨年10月の時点で、現在はその割合が拡大していると思われる。
MicrosoftのSatya Nadellaは、新規プログラムの20%から30%がAIで開発されるとしている。
また、SalesforceのMarc Benioffは、技術サポートを含むソフトウェア開発の30%から50%がAIで実行されると公表し、ソフトウェア開発で自動化が早いペースで進んでいる実態が明らかになった。
AIコーディングの技法:アシスト
スタートアップ企業を中心に、人間に代わりプログラムをコーディングするAIモデルの開発競争が白熱し、AIコーディング製品が急速に普及している。
AIコーディング技法は、コーディング支援からエンジニアリング自動化に向かって進化している。コーディング支援は「IDE Editors」と呼ばれ、IDE(Integrated Development Environment、開発環境)で稼働するAIモデルで、コーディングをアシストする。
その代表は「Cursor」(下の写真)で、プログラマが入力したテキストに続くコードを生成する。
また、プログラマのコーディングにエラーがあればそれを修正する。

AIコーディングの技法:エンジニアリング自動化
これに対しエンジニアリング自動化は一連のソフトウェア開発を自動で実行する機能を持つ。
通常、ソフトウェア開発はコーディングだけでなく、ソフトウェア開発の立案、プログラミング、コードの実行、テスト、ドキュメンテーション、と一連のプロセスから成る。
エンジニアリング自動化は、このプロセスを人間に代わり自動的に実行するモデルとなる。
高度なAIエージェントで、その代表がCognitionの「Devin」となる。(下の写真、DevinによるAIデータ解析システム開発の事例、各モジュール(箱の部分)をDevinがパラレルに実行する)

米国で雇用問題が深刻化
AIコーディングは新入社員の採用に深刻な影響を及ぼしている。
スタンフォード大学デジタル経済研究所「Stanford Digital Economy Lab」はAIが採用に及ぼす影響を調査し、その結果を公表した。
レポートによると、22歳から25歳までのエンジニアの採用は、2022年に比べ20%低下していることが分かった(下のグラフ)。
若手エンジニアの職種はAIに置き換わり、企業は採用を控える実態が明らかになった。一方で、31歳以上の熟練エンジニアの採用は継続して伸びており、経験豊富なエンジニアがAIを使ってソフトウェア開発を効率的に展開する形態にシフトする流れが鮮明になった。
エンジニアを目指す新卒大学生は氷河期を迎えることになり、その雇用対策が喫緊の課題となる。

なぜAIコーディング技術が急進するのか
AIモデルの中でAIコーディングがキラーアプリとなり、市場で導入が急速に拡大している。
AIコーディングが注目される理由はアルゴリズムを教育するデータにある。AIコーディングはフロンティアモデルをベースとし、「強化学習(Reinforcement Learning)」という手法でポスト教育される。その際に、教育データとして実際のコーディング事例が使われる。
コーディングでは、その内容が正しいか間違っているかが明瞭で、強化学習で報酬(Rewards)をデジタル(1か0)に設定できる。これは「Verifiable Rewards」といわれ、結果が正しいか間違いかを明瞭に判定でき、アルゴリズムの教育を高精度で実行できる。
このため、AIコーディングの開発が急加速し、若手エンジニアレベルに到達した。

エンジニアの役割が変わる
これからAIによるコーディングの範囲が広がり、AnthropicのDario AmodeiはAIがソフトウェアの90%を開発するとの見通しを公表している。
コーディング作業が高度に自動化される可能性を示した。一方、ソフトウェア開発ではAIコーディングでカバーできない部分は大きく、これらがエンジニアの主要な任務となる。
具体的には、アプリケーションのデザインやアーキテクチャの選択などで、これらがエンジニアの中心業務となる。更に、これからは多数のAIエージェントが並列でプログラミングを実行し、人間はこれらを管理運用する管理職となる(上の写真、イメージ)。
次世代のエンジニアは全員がプロジェクト・マネジャーとなり、コーディング技術だけでなくシステム設計などハイレベルなスキルが求められる。