[No.166]OpenAIは次世代モデル「GPT Next (GPT-5)」を今年中にリリース、博士号レベルのインテリジェンスを持つ巨大システム、慎重派が会社を去り製品出荷時期が早まる

OpenAIは次世代モデル「GPT Next (GPT-5)」を今年中に出荷することを公表した。

CEOのSam Altmanは、次世代モデルは高度な考察力を持ち、GPT-4に比べて機能が格段に進化すると述べている。GPT-5は「Gobi」や「Arrakis」などのコードネームで開発され、2025年か2026年にリリースされると噂されてきた。

しかし、Ilya Sutskeverなど開発慎重派が会社を去り、次期モデルの出荷が早まる公算となった。

出典: Adobe Stock

次世代モデルの開発

OpenAIは次世代モデル「GPT Next(GPT-5)」を今年中にリリースすることを明らかにした。

このモデルが次の段階の機能を実現し、人間レベルのインテリジェンス「AGI」に繋がる。OpenAIは「GPT-5」を開発していると噂されてきたが、この事実が確認されたことになる。

また、次々世代モデル「Future Models」を2020年代にリリースすることも明らかにした。

Microsoftの説明

これに先立ち、Microsoftは開発者会議「Build 2024」でGPT-5に言及した。

基調講演でCTOであるKevin Scottが、次世代モデルを開発するために必要となるAIスパコンの規模を説明した。AIスパコンの規模を海洋生物で示し、GPT-3.5の開発ではイルカの大きさで、GPT-4ではシャチの大きさで、GPT-5ではこれがクジラの大きさになると解説 (下の写真)。

クジラの大きさがアルゴリズムの規模を示しており、GPT-5は巨大なシステムになるとの見解を示した。

Scottは触れなかったが、GPT-5はMicrosoftのアリゾナ州フェニックス地区のデータセンタで開発されている。

出典: Microsoft

GPT-5は巨大なシステム

※未確認情報:ソーシャルメディアでは研究者の間でGPT-5に関する推測情報が交わされている。

これによると、GPT-5の規模(パラメータ数)は52T(兆個)でGPT-4の1.76Tの約30倍の規模となる。

OpenAIはパラメータ数について公開していないが、Scottの説明でGPT-5の規模の大きさを感覚的に把握できる。

GPT-5はPh Dレベルの知能

Altmanは大学での講演や著名人との対談で、GPT-5の概要やコンセプトを紹介している(下の写真、スタンフォード大学での講演)。

これらを総合すると、GPT-5は「仮想頭脳(Virtual Brain)」となる。人間の頭脳のように、GPT-5は「深い考察力を持ち、複雑なタスクを実行できる」機能を備える。GPT-5は、人間レベルの高度な知能を持つAGIの一歩手前のAIエージェントであるとの解釈を示している。

また、CTOのMira Muratiは、「GPT-4は高校生レベルの知能」を持つが、「GPT-5はPh.D.レベル(博士課程修了者レベル)」と説明し、インテリジェンスが劇的に進化する。

出典: Stanford eCorner

GPT-5の名称

次世代モデルの名称は「GPT-5」と予測されているが、Altmanは「特別な名称を付与する」と述べている。

GPT-5という名前ではなく、機能や特性を示した製品名になることを示唆している。GPT-3.5は「ChatGPT」という製品名で世界に普及したが、これと同様に「GPT-5」は機能を前面に押し出した構造となる。

ChatGPTは会話機能「Chat」を冠したブランディングとなったが、GPT-5は頭脳や知能を示す名前になると思われる。(このレポートでは次世代モデルを「GPT-5」と記載する。)

安全性より機能を重視

OpenAIはモデルの安全性より機能を重視し、GPT-5のリリース時期が早まった。

OpenAIは高度なAIの安全性を検証する部門「スパーアラインメント(Superalignment)」を設立し、AIを安全に開発運用する研究を進めてきた。この部門の代表がIlya Sutskeverで、人間より高度な知能を持つAGIの登場に備え、アラインメント(安全技術)の研究を進めてきた。

しかし、5月、SutskeverはOpenAIを去り、事実上、スパーアラインメントの活動が停止した。SutskeverはXでOpenAIはAGIを安全に開発することを期待すると述べている(下の写真)。

出典: @ilyasut

Altmanは技術推進派

一方、Altmanは技術推進派で、GPT-4oなど先進モデルを相次いで投入した。

Sutskeverは技術慎重派で、アラインメント研究に重点を置く姿勢を取り、OpenAIは危険なAIモデルの開発を急ぐべきではないと、技術推進派の動きを抑制してきた。

技術慎重派が会社を去ったことで、Altmanは自由度が増し、企業運営をアグレッシブに展開する姿勢が明らかになった。

バイデン政権の大統領令

バイデン政権の大統領令は、次世代モデル「フロンティアモデル」について、開発企業に製品を出荷する前に、その安全性を検証することを求めている。

GPT-5はこれに該当し、OpenAIは安全規格に従って、製品出荷前に試験を実施することになる。GPT-5が大統領令に基づく安全試験を実行する最初のケースで、OpenAIは厳格なリスク管理が求められる。

GPT-5のリリースで、社会に多大な恩恵をもたらすことが期待されるが、重大な危険性を内包するAIと共棲する時代に突入する。