[No.103]米国政府はChatGPTなど高度なAIモデルに認証制度を導入、モデルを検査し合格したものを信頼できるAIと認定
バイデン大統領はハイテク企業に、AIを出荷する前に、製品の安全性を確認するよう求めた。
この声明に続き、米国商務省はChatGPTなど高度なAIモデルに関し、安全性の認証制度「Certifications」の導入準備を開始した。
認証制度とは、AIの安全基準を制定し、これをパスした製品に、認定証書を付与する仕組みとなる。
安全制度の概要
これは、米国商務省の電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration (NTIA))が発表したもので、「AIの説明責任政策 (AI Accountability Policy)」と呼ばれ(上の写真)、AIの安全性を保障する制度の構築を目標とする。
これはクルマの型式認証に似た考え方で、クルマの販売では車両が安全規格を満たしていることが義務付けられるが、AIも同様に、出荷されるAIは安全規格を満たしていることが求められる。
パブリックコメント
この制度の構築に向け、NTIAは一般から意見を求める通達を公開した。
企業や利用者から寄せられたパブリックコメントを参考に、制度の在り方を決めていく。
NTIAはバイデン大統領の諮問機関で、この結論を元に、AI認証制度に関し大統領にアドバイスをすることとなる。
この助言を元に、バイデン政権は連邦議会に働きかけ、法令の制定を進めることが最終ゴールとなる。
認証制度の素案
NTIAは、AIが安全であることを保障する認証制度の素案を示し、これに対してコメントを求めている。
NTIAが提示した認証制度の素案は三つのステップから構成される:
- 監査(Audits):検証のためにAIシステムの情報を得る
- 検証(Assessments):得た情報を審査し安全基準を満たすかどうかを判定
- 認証(Certifications):安全基準を満たすAIに証明書を発行
AIの安全性を認証することで、高度なAIが利用者から信頼を得ることになる。
認証制度の論点
NTIAはこの構想に関してパブリックコメントを求めているが、論点を整理し、検討すべきポイントを明らかにした(下のグラフィックス)。
認証制度が機能するためには、利用者が安全にAIを利用できるだけでなく、高度なAIを開発する企業にとってもメリットがあることが重要となる。
NTIAが提示した論点は次の通りで、これらの点を中心に意見を求めている:
- 検査方法:何を検証すれば信頼で安全と言えるか
- データ:どのデータを使って検証するか
- インセンティブ:この規格を導入するインセンティブ
- アプリケーション:業種間で利用法が異なるAIをどう検証するか
連邦省庁の動き
米国では連邦政府によるAIを規制する法令は無いが、各省庁は既存の法令に従ってAIの運用を監視する施策を取っている。
その中心が連邦取引委員会(Federal Trade Commission)で、反トラスト法に基づく不公正な競争の制限と、消費者保護の推進を任務としている。
消費者保護では、AIの危険性から消費者を守ることを重点的に進めており、アルゴリズム利用に関するガイドラインを発表し、不公正な利用を現行法令で取り締まる。
連邦議会の動き
チャットボットChatGPTが社会で急速に普及し、連邦議会でAI規制に向けた機運が高まっている。
カリフォルニア州の下院議員Ted Lieuは、AIの危険性を認識し、議会はAIを規制するための行動を起こすことを呼び掛けている。
また、コロラド州の上院議員Michael Bennetは、高度なチャットボットが子供たちに有害な助言をしている事実を指摘し、ハイテク企業に対応を求めている。
国会議員はAIの威力を認識し、同時にAIの脅威を実感しており、AI規制に関するアクションを求めている。
OpenAIの安全対策
ChatGPTなど高度なAIを生み出しているOpenAIは、政府にAIを規制するための法令を整備するよう求めている。
OpenAIはブログで安全性に関する取り組みを公表し(下のグラフィックス)、ChatGPTなど高度な言語モデルが、危険な情報を出力しないための措置を公表した。
同時に、政府はAI企業が順守すべきベストプラクティスを示し、開発と運用のガイドラインの制定を求めている。
これに先立ち、OpenAIはAI規制について政府と協議していることを明らかにしている。
電気通信情報局「NTIA」とは
NTIAは商務省配下の組織で、通信や情報技術に関し、大統領に政策をアドバイスすることをミッションとしている。
NTIAはブロードバンドの普及や5Gなど無線通信の周波数管理に関する政策の立案を支えてきた。
NTIAは、信頼できるAIを普及させることが、イノベーションを生み経済振興につながると理解している。
バイデン政権はNTIAの答申を受け、連邦議会と協調してAI規制の法制化を進める。