[No.91]MicrosoftはOpenAIとの提携を強化、言語モデル「GPT-3」やチャットボット「ChatGPT」の開発を加速する
MicrosoftはAI研究機関OpenAIへ出資することを発表し、AI開発のブレークスルーを加速する。
また、両社は研究成果をそれぞれのAIビジネスに展開するとしている。
両社は既に提携関係にあり、Microsoftは2019年と2021年に出資しており、今回が三回目となり、関係を強化する。
OpenAIは言語モデル「GPT-3」やチャットボット「ChatGPT」を開発しており、Microsoftはこれら先端技術をクラウドで企業に提供する。
AIスパコン開発
OpenAIは高度な言語モデルを生み出しているが、これらはMicrosoftのAIスパコンを使って開発されている。
言語モデル「GPT-3」やチャットボット「ChatGPT」はニューラルネットワークの規模が巨大で、開発では世界最速レベルのスパコンが必須となる。
MicrosoftはNvidiaのGPUプロセッサ「A100」を使ってスパコンを開発し世界5位の性能を誇る(下の写真)。
Microsoftはこの性能を更に向上させ、OpenAIはこの開発基盤で次世代の言語モデルを開発し、イノベーションを加速させる。
同時に、Microsoftはこのスパコンをクラウド「Azure」に展開し、企業はここで大規模AIモデルを開発しそれを運用する。
AIをクラウドで提供
MicrosoftはOpenAIが開発する最先端のAIモデルをクラウドで提供する。
このクラウドは「Azure OpenAI Service」と呼ばれ、試験的に運用されてきたがこれを一般に公開する。
ここでは、「GPT-3」や「ChatGPT」の他に、プログラムをコーディングするAIモデル「GitHub Copilot」や言葉の指示に従ってイメージを生成するAIモデル「 DALL·E 2」が提供される。
MicrosoftはこれらのAIモデルを企業向けに提供するが、ビジネスとして安全に運用するために、セキュリティを強化し、AIの危険性を低減している。(下の写真、GPT-3でスポーツの試合のサマリーを生成している事例。)
OpenAIへ開発環境を提供
MicrosoftはOpenAIにAI開発環境を独占的に提供しているが、今回の提携で、これを継続することを確認した。
OpenAIはMicrosoftのクラウドを使って、先進技術の開発を実行するほかに、自社で事業を展開するために、AIモデルやAPIサービスをこのクラウドで顧客向けに提供する。
従来はAmazon Web Servicesを使っていたが、Microsoftと提携し、これを全面的にAzureに切り替えた。
OpenAIとは
OpenAIはサンフランシスコに拠点を置く新興企業で、Sam Altman やElon MuskらがAI研究の非営利団体として、2015年に設立した。
OpenAIは、人間レベルのインテリジェンスを持つAIを開発することをミッションとしており、深層強化学習(Deep Reinforcement Learning)や大規模言語モデル(Large Language Model)を中心に研究を進めている。
OpenAIのAI開発戦略
OpenAIは非営利団体として設立されたが、経営方式を大きく変え、今では準営利団体として、最先端のAI技法の研究開発を進める。
Elon Muskは2018年にOpenAIの取締役を辞任したが、投資家として関与している。
Muskは、AIは「人類にとって最大の脅威」であると発言しており、人類に利するAIを研究する組織としてOpenAIを設立した。
Sam Altmanとは
また、Sam AltmanはCEOとしてOpenAIの運営に携わっている。AltmanはAIにより利益の分配が偏り、多くの人が職を失うことになると懸念している。
失業者対策の一つとしてベーシックインカム(Universal Basic Income)の導入を求めており、自身でこの実証試験を進めている。(下の写真、Sam Altman(左側)とMicrosoft CEOのSatya Nadella(右側))
MicrosoftがOpenAIに着目する理由
言語モデルは規模が大きくなると、処理性能が向上するだけでなく、多彩な機能を現すことが分かっている。
GPT-3など言語モデルは「Transformer」というアーキテクチャで構築され、この規模を拡大すると、言語だけでなく、イメージやビデオやスピーチなど、他のメディアを理解する。
つまり、TransformerベースのAIモデルはマルチメディアをインテリジェントに処理する機能を獲得し、社会のインフラを担う存在となる。
MicrosoftはOpenAIと共同で、AIの社会基盤をクラウドで提供する構想を描いている。