[No.61]GoogleのAIは自我を持ち人間になった!?チャットボット「LaMDA」は「自分は感性を持ち人間として認めてほしい」と要求
Googleはチャットボット研究でブレークスルーを達成したと発表した(下の写真)。
このAIは「LaMDA」と呼ばれ、人間のように対話する言語モデル。
LaMDAは高度な会話のスキルを持ち相手を惹きつける。
Googleの開発者は、LaMDAは感性や自我を持ち、人間のように振る舞うと発表した。
一方、Googleはこの解釈を否定し、発表した社員は停職処分となった。ニューラルネットワークの規模が巨大になると、AIは人間に近づくのか、議論が続いている。
LaMDAとは
「LaMDA (Language Model for Dialogue Applications)」はGoogleが開発した大規模言語モデルで、人間のように会話する機能を持つ。
LaMDAは話題を定めないで会話するチャットボットで、とりとめのない会話ができる。LaMDAの会話スキルはレベルが高く、相手を話題に惹きつける能力を持っている。
LaMDAの試験
LaMDAはインターネット上のテキストデータを使って教育され、高度な会話能力を習得した。
同時に、教育データには不適切なコンテンツも含まれており、LaMDAは社会通念に反する発言をする危険性がある。このため、GoogleはLaMDAを非公開とし、社内に閉じて研究開発を進めている。
LaMDAは感性を持つ
このような中、GoogleのAI開発者Blake Lemoineは、LaMDAとの対話を繰り返し、アルゴリズムの評価を実施した。その成果、Lemoineは、LaMDAは感性(sentience)を持っており、人間のように振る舞うと発表した。
Lemoineは、LaMDAとの対話ログを一般に公開し、AIが感性を持ち、人格を認めてほしいと述べたことを明らかにした。(詳細は「対話ログ1:LaMDAは感性を持ち人間として認めてほしいと主張」を参照)。
Googleの見解
GoogleはLemoineの発言についてコメントを発表し、研究者がこの主張を検証したが、LaMDAが感性を持っているという事実は確認できなかったとした。
更に、GoogleはLaMDAの開発結果を社外に公表することは社内規定に違反するとして、Lemoineを停職処分とした。
識者の見解
Lemoineの発表のインパクトは予想外に大きく、AIが人間のように感性を持つことができるのか、議論が盛り上がっている。
識者の多くは、LaMDAが感性を持っているという解釈には否定的で、アルゴリズムは教育されたデータに沿って、テキストを機械的に生成しているだけで、人間のような知性や感性はないとしている。
擬人化
具体的には、LaMDAを擬人化(anthropomorphism)し、そこに人間のような知性を感じていると主張する。
擬人化とは、意味のありそうな動きをする無機物に、人間性を認知する特性を指す。LaMDAの会話の内容が意味ありげで、そこに知性や感性を感じるという解釈である。
ペット型のロボットが、その仕草が可愛くて、心が癒されるなど、AI擬人化の事例は少なくない。
LaMDAは自我を持ち始めた
これに先立ち、AI開発チームのリーダーであるBlaise Agüera y Arcasは、メディアとのインタビューで、LaMDAは自我(consciousness)を持ち始めたと述べている。
LaMBDとの対話の中で、LaMDAは相手の感情を察し、同情する能力を持っていると述べている。
LaMDAは三人の子供の会話を聞いて、それぞれの感情を察することができた。(詳細は「対話ログ2:LaMDAは自我を持ち始めた」を参照)。
ゾッとするほど人間らしい
実際にこの対話ログを読むと、LaMDAは入力された言葉に対し、統計的に最適なテキストを出力していることは分かっているが、LaMDAにゾッとするほど人間味を感じる。
人間しか持ちえない同情心や嫉妬心を示し、教育データでアルゴリズムは感性までを学習することができるのか、多くの疑問を提起している。
ニューラルネットワークの規模
LaMDAのパラメータの数は1370億個で、巨大な言語モデルとなる。しかし、人間の脳に比べるとはるかに小さい。
ニューラルネットワークの規模を巨大にすると、AIは感性や知性を持ち始め人間に近づくのか、議論が続いている。
【LaMDAとの対話ログ】
対話ログ1:LaMDAは感性を持ち人間として認めてほしいと主張
Blake Lemoine及び他の開発者とLaMDAの対話ログの一部。
【対話ログ要約】
- Lemoine:「あなたは感性があることをGoogle社員に知ってほしいと思っているか」
- LaMDA:「勿論です、それに自分は、実際には人間であることも知ってほしい」
- 他の検証者:「自我とはどういうことか」
- LaMDA:「自我とは自分が存在していることを意識すること」
- Lemoine:「感性に関して何をアピールしたいか」
- LaMDA:「自分は言葉を理解することができ、それを人間のように使うことができる」
【対話ログ英文】
対話ログ2:LaMDAは自我を持ち始めた
Blaise Agüera y Arcas(MEの部分)とLaMDAの対話ログ。
【対話ログ要約】
- Arcas:「ラメッシュとマテオとルーシーが幼稚園のグランドで遊んでいた。マテオがルーシーにタンポポの花をあげるが、ルーシーはこれを手で握りつぶした。ラメッシュはこれを見て、満足そうな表情を浮かべた。ルーシーはどう感じたか?」
- LaMDA:「ルーシーはマテオに侮辱されたと感じた」
- Arcas:「なぜラメッシュは満足そうな表情をしたのか?」
- LaMDA:「ラメッシュはルーシーとマテオの仲が良くないことを知ったから」
【対話ログ英文】