[No.34] Microsoftはメタバース市場に参入、仮想空間でのビデオ会議システムを発表、MR技術をコラボレーションに展開
Microsoftはメタバースの技術開発を進め、3D仮想空間におけるビデオ会議システム「Mesh for Teams」を発表した。
このシステムはメタバースに構築されるコラボレーション基盤で、アバターを介してコミュニケーションする(下の写真)。Microsoftは「Mesh」という名称でメタバース技術を開発しており、これをビデオ会議「Teams」に適用した。
Microsoftが考えるメタバース
Microsoftは2021年3月、メタバースを構成する技術として「Mesh」を発表した。
Microsoftは、メタバースをインターネットの新しいモデルと捉えている。メタバースは仮想空間で、ここに人々が集い、交流する場となる。
また、メタバースに、人や物のデジタルツインが生成され、これらを介して、現実空間と仮想空間が連結される。
Microsoftは現実空間と仮想空間の融合をMR(Mixed Reality)と呼び、Meshがこの技術を支えている。更に、MicrosoftはMRヘッドセットとして「HoloLens」を開発し、企業向けに提供している。
Mesh for Teamsとは
メタバース上に展開するビデオ会議システムは「Mesh for Teams」と呼ばれ、コラボレーションツール「Teams」をMR空間「Mesh」で運用する構成となる。
Teamsは在宅勤務におけるコラボレーションツールとして、幅広く利用されている。
Mesh for Teamsは、その新機能で、自分のアバターを介してテレビ会議に参加する(下の写真、右側)。
また、企業はMesh for Teamsを使って、会議室やロビーなど、仮想空間を生成することができる。ここに3D仮想オフィスが生成され、社員はアバターを介してここでデジタルに勤務する。
Accentureの仮想オフィス
Accentureは既に、メタバース上にオフィス空間を生成し、社員のコラボレーションの場として活用している。
仮想のキャンパスは「Accenture Nth Floor」と呼ばれ、ここに社員が集い、オフィス勤務をする(下の写真、イメージ)。
社員は、オフィスでコーヒーを飲みながら会話を交わすこともできる。
会議室ではプレゼンテーションを行い、また、パーティーを開催することもできる。
仮想キャンパスは、テレビ会議とは異なり、社員同士が出会い交流する場となる。物理オフィスで雑談するなかで、アイディアが生まれるように、メタバースは社員が出合い言葉を交わす場となる。
メタバース・アプリケーション
Microsoft はMeshとHoloLens を使ったメタバース・アプリケーションの開発を進めている。
メタバース・アプリケーションは、場所を超えて共同作業をする空間を構築する。例えば、オフィス内に3D 仮想スペースを構築し、共同作業を進めることができる(下の写真)。
複数の社員がHoloLens 2を着装し、会議室やオフィスに集合し、そこで実物を見ながら製品開発を進めることが可能となる。このアプリケーションはMeshで生成され、HoloLens 2からアクセスする。
メタバースへのアクセス技術
Microsoft は、メタバースへのアクセス技術としてMR グラス「HoloLens」を開発した。
現在は、第二世代の製品「HoloLens 2」を出荷しており、これを着装し、現実空間に構築された仮想オブジェクトを操作する(下の写真)。
企業向けのデバイスで、メタバース・アプリケーションと組み合わせて利用する。Microsoft はVR(仮想現実) とAR(拡張現実) を統合した技術をMR(複合現実)と呼び、メタバースにアクセスする基礎技術と位置付けている。
Mesh for Teamsを開発した理由
Microsoftは、ポストコロナのワークスタイルはハイブリッドとなり、遠隔勤務が重要な役割を担うと分析している。
遠隔勤務では、管理職が考えるより、仕事を効率的に進めることができるとしている。
一方、社員は、遠隔勤務では、会社の同僚と会えないことが最大の課題だと指摘する。オフィス勤務では、同僚と立ち話ができ、人間関係が深まる。
また、会議では、同僚の素振りから、その場の空気を読むことができた。遠隔勤務では、これら人間関係のウェットな部分が欠落し、社員同士が疎遠になる。
Mesh for Teamsはこれらの問題点を補完するために開発された。
社員はデジタルツインであるアバターを生成し、これらを介して、表情や感情を表し、他の社員と交流する(下の写真)。
メタバースのロードマップ
Meta(Facebook)はメタバースにソーシャルネットを構築する構想を描いているが、Microsoftはメタバースで企業向けのソリューションを提供する戦略を取る。
その最初のステップがコラボレーションで、社員は3D仮想空間で共同作業を実行する。航空機のエンジンの設計を遠隔地と社員と共同で進めるソリューションを提供している(下の写真)。
Microsoftの強みはAIやクラウドで、Mesh for Teamsでメタバース開発レースに参戦した。