[No.30] Facebookは社名を「Meta」に変更しメタバース企業となる、3D仮想空間で人々が交流するプラットフォームを開発する

Facebookは、開発者会議「Connect 2021」で、ソーシャルメディア企業からメタバース(Metaverse)企業になることを発表した。

​CEOのMark Zuckerbergがメタバース空間で明らかにしたもので(下の写真)、これに伴い、社名も「Facebook」から「Meta」に変更する。
​Facebookは創設以来最大の危機に直面しており、社名を変えることで、新生企業として再出発する。

​一方、Metaが開発しているメタバースは、従来の技法から大きく進化したもので、スマホの次のプラットフォームになる可能性を秘めている。

出典: Meta

メタバースとは

メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここに人々が集い交流する。
従来のVR空間とは異なり、メタバースでは利用者が仮想社会と連動し、そこに存在している感覚「Social Presence」を覚える。次世代のソーシャルネットワークはメタバースに構築される。

​Facebookは、メタバースをモバイル・インターネットの次のプラットフォームとして位置付け、技術的に大きな飛躍となる。但し、メタバースは今すぐに使えるサービスではなく、完成までに時間を要すことも明らかにした。

​Facebookはそのビジョンを示したもので、これに向かって技術開発が進んでいる。 (下の写真、メタバースの事例、無重力空間で友人同士がアバターを介して交流している様子。)

出典: Meta

家庭向けのメタバース

Zuckerbergは基調講演で、メタバースの様々な利用方法を紹介した。
その一つが家庭向けのメタバースで、「Horizon Home」と呼ばれる。

​これはVRヘッドセット「Oculus」を着装して利用するサービスで、複数の友人がメタバースに集い、それぞれのアバターを介して交流する(下の写真)。

​お互いに会話するだけでなく、グループでゲームをプレーするなど、アバター同士がインタラクションできることに特徴がある。

出典: Meta

企業向けのメタバース

今回の発表に先立ち、Facebookは企業向けのメタバースを発表している。
これは、「Horizon Workrooms」と呼ばれ、遠隔勤務向けのコラボレーションシステムとなる。

​社員はアバターを介してビデオ会議に出席し、他の社員とインタラクションしながら、会議を進める(下の写真)。ホワイトボードに説明資料を表示するなど、リアルのオフィスを仮想空間に構築する。

出典: Meta

メタバースでゲームをプレー

ゲームはメタバースの重要なアプリケーションで、既に数多くのコンテンツが開発されている。
ARグラスを着装すると、海外に住む友人とチェスを対戦することができる(下の写真)。

​また、VRヘッドセットを着装すると、没入型のゲームを体験できる。OculusはVRゲームを数多く開発しおり、ヒット商品は「Beat Saber」で、飛んでくる物体を刀で切り落とす。

出典: Meta

メタバースでフィットネス

近年は、ジムでエクササイズをする代わりに、自宅でVRヘッドセットを着装してトレーニングする人が増えた。

​フィットネスバイクは、仮想のスタジオで、インストラクターの指示に従ってペダルを漕ぐ(下の写真)。また、「Supernatural Boxing」シリーズは、VRボクシングを通したエクササイズで、巨大なモンスターと対戦する。

出典: Meta

仮想空間で教育

メタバースは教育プラットフォームとして使われる。ARグラスを着装して土星を見ると、目の前にその構造が描写される。土星の環の中に入ると、無数の氷の塊で構成されていることが分かる。

​また、VRヘッドセットを着装すると、古代ローマの都市に降り立つことができる(下の写真)。市場で売られている魚や果物を見て、街の賑わいを感じる。また、建造物のアーキテクチャや建設方法を学ぶことができる。

出典: Meta

社名の変更

Zuckerbergは、社名を「Facebook」から「Meta」に変更したことを明らかにし、その理由をメタバース企業に転身するためと説明した。

​Metaはギリシャ語で「Beyond」という意味で、ソーシャルネット―ワークの次の章が始まることを示している。既存サービスの名称はそのままで、Metaの配下でFacebook、Instagram、WhatsAppがビジネスユニットとして事業を継続する。(下の写真、本社の前のパネルは新しいロゴに置き換わっている。)

出典: Meta

Facebook Papers

いま、Facebookは創業以来最大の危機に直面している。Facebookの元社員が、社内資料を公開し、会社は利用者の安全を犠牲に利益を上げていると告発した。

持ち出された大量の社内資料は「Facebook Papers」と呼ばれ、Facebookのアルゴリズムやビジネス慣行が記載されている。

​Zuckerbergはこの危機を乗り越えるため、社名をMetaとし、新生企業として出直しを図り、社会からの批判を避ける思惑もある。