[No.209]アメリカ政府のAI政策が規制強化から開発促進に大転換!!OpenAIは一転してAIの規制緩和を求める、連邦議会は特区を設立しAI開発を後押し

アメリカ議会上院は公聴会を開催し、AI政策に関しOpenAI、AMD、Microsoftなどから意見を聴取した。

公聴会の目的は、アメリカがAI開発で勝利するための政策の立案で、規制緩和、技術革新、中国との競争などで意見が交わされた。トランプ政権となり、アメリカ政府はAIの規制から推進に政策を一転した。

OpenAIは、前政権では規制強化を求めたが、公聴会では一転して、規制緩和を主張した。

連邦議会は開発特区(サンドボックス)を設立し、ここでAIをフリーハンドで開発させる構想を明らかにした。

出典: National Park Service

公聴会の概要

アメリカ連邦議会上院は、AI競争で勝利することをテーマ「Winning the AI Race: Strengthening U.S. Capabilities in Computing and Innovation」に公聴会を開催し、主要企業から意見を聴取した。

公聴会には、OpenAIのSam Altmanなどが出席し意見を陳述した(下の写真)。AltmanはAI開発の規制を緩やかにすることを求めた。

また、トランプ政権期間中に人間の知能を超えるAIモデルAGI(Artificial General Intelligence )が生まれるとの見通しを示した。

公聴会の委員長であるTed Cruz上院議員は、新たなAI法案「AI Regulatory Sandbox」の構想を明らかにした。

出典: U.S. Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation

単一の緩やかな規制

Altmanは連邦政府が全米をカバーする法令を制定し、緩やかなAI規制を実施することを求めた。

現在は、全米50州が異なるAI規制法を制定し、開発企業はこの複雑な規則に準拠することを求められている。Altmanは、AI製品を出荷する前に安全検査を義務付けている現行法式は、企業の大きな負担となるとして、緩やかな規制を求めた。

ただし、規制の内容については回答を控えた。

移民によるAI人材の確保

AltmanはAI研究者やエンジニアの採用を容易にするための政策を求めた。

アメリカが科学技術で世界のリーダーとなっている大きな要因は移民政策にある。優秀な研究者やエンジニアがアメリカに移民し、ハイテク産業の基盤を支えている。

AIにおいては、研究者やエンジニアがビザを取得するプロセスを簡素化することを要求した。

スケーリングとAGIの登場

Altmanはスケーリングの法則は継続しており、AIモデルのインテリジェンスは幾何級数的に向上しているとの見解を示した。

AIモデルの教育プロセスにおけるスケーリングは緩やかになったが、インファレンスのプロセスでは実行時間を長くすると性能が向上している。また、AIモデルで特定の性能に到達するためのコストは1年ごとに1/10となり、インテリジェンスの価格が低下している。

更に、AIモデルが人間レベルの知能に達成するための開発期間は急速に短くなっており、Altmanはトランプ政権期間内に「AGI」が登場するとの見解を示した。

製品出荷ロードマップ

AltmanはOpenAIの製品開発ロードマップを示し、今後3年以内にAIモデルで大きな技術進化があると述べた。

OpenAIの製品リリース計画は:

  • 2025年:AIエージェント、実社会の複雑なタスクを処理するモデル、病院における予約業務など
  • 2026年:科学分野でブレークスルー、気候変動や医療などの分野でAIモデルの活躍が期待される
  • 2027年:ロボティックス、AIモデルを搭載したロボットの登場、工場など実社会で生産性が向上する

米国技術を世界に拡散させる

MicrosoftのBrad Smith社長はアメリカがAI競争で勝つためにはAIのイノベーションとエコシステムの両方が必要であるとの考え方を示した(下の写真)。

エコシステムとは、インフラ、プラットフォーム、アプリから構成されるAIシステムの全体モデルを示す。AI競争を優位に展開するためには、これらをアメリカの技術で提供する必要がある。

特に、アプリのレイヤーでは、AIモデルが世界各国に拡散(Diffusion)すること必須で、多くの人に利用されることで、最終的な勝利者となる。

このために、政府は過度な輸出規制を導入するのではなく、最小の規制で製品拡散を後押しすべきとの見解を示した。

出典: U.S. Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation

アメリカ連邦議会の構想

公聴会で委員長のTed Cruz上院議員はAI規制法に関する構想を明らかにした(下の写真)。

この法案は「AI Regulatory Sandbox」と呼ばれ、AI開発における規制を最小限に留め、技術革新を後押しする構造となる。AI開発を推進するための特別地区「サンドボックス(Sandbox)」を制定し、企業はここで製品を最小の制限の元で開発する。

サンドボックスは法令に関する特別なエリアで、企業は政府機関(連邦取引委員会や司法省など)から法的な責任を問われることなく、自由にAI開発を進める。

これはインターネットが登場した当初のアメリカ政府の政策を模したもので、黎明期のAI技術の開発を民間企業や個人が自由に進められる環境を提供する。

出典: U.S. Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation

公聴会を聴くと

公聴会はOpenAIがAI政策を大転換した場となった。

2023年に開催された公聴会では、Altmanは政府が厳格なルールを設定し、AIを安全に開発する政策を提言した。今回の公聴会では一転して、ライトタッチ(Light-Touch)な規制を導入することを提言した。

企業が幅広い自由度を持ち、技術革新を優先できる環境の整備を求めた。同時に、DeepSeekなど中国企業がAI技術を急速に伸ばしており、連邦議会は米国企業に開発のペースを速めることを迫っている。

民間企業と連邦政府はAI競争で勝利することを共通の目標としており、アメリカはAIを規制する政策から、開発を促進する方向に進み始めた。