[No.201]OpenAIはトランプ政権にAI政策を提言、AI開発を促進するため規制の緩和と著作物のフェアユースを求める、中国企業の追い上げを脅威と認識し連邦政府に開発の後押しを要求

OpenAIは今週、トランプ政権にAI政策に関する提言書を提出した。

この中でOpenAIは、AI規制を緩和し開発を促進する政策を導入することを求めた。特に、AIモデルを教育する著作物の使用に関し、これをフェアユースと解釈し、企業がこれらを使用できることを要求した。

OpenAIは、DeepSeekなど中国企業が米国企業キャッチアップした現状を指摘し、米国がAI技術で世界をリードするために、トランプ政権に技術革新を後押しすることを要請した。

出典: OpenAI

AIアクションプラン

トランプ政権は米国のAI政策「AI Action Plan」の制定に向けて準備を進めている。

これはバイデン政権のAI政策を置き換えるもので、新たなAI指針が制定される。

この目標に向かって、ホワイトハウスはAI政策に関し、業界からのパブリックコメントを集約しており、OpenAIなど主要企業は意見書を提出した。

OpenAIの基本指針

OpenAIは提言書の中でAIと経済の関係など基本指針を示した。

AIは米国経済を振興するための基幹技術であり、同時に、国家安全保障の防衛技術となる。中国共産党は2030年までにAI技術で米国を追い抜き、世界のリーダーとなることを目標としている。

独裁国家がAIを制御することを防ぐため、米国がAI市場のリーダーとなり、民主主義を守ることがAIアクションプランの基軸となる。

出典: Generated with Grok

OpenAIの提言

この基本指針に沿って、OpenAIはAI政策について、五つの項目を提言した:

  • 政府のAI導入:連邦政府や軍事機関AIを導入しモデルケースになる
  • 規制緩和:AIに関する制約を緩和し、州政府では無く連邦政府が規制を統括する
  • 輸出規制:AIを同盟国に提供し、同時に、中国への輸出を制限する
  • 著作権:AI教育で著作物の使用をフェアユースとして認める
  • インフラ整備:AI開発のインフラ整備を支援し、また、経済特区を設立する

規制緩和:イノベーションの自由

米国では連邦政府によるAI規制法は制定されておらず、州政府がAI規制を進めるという構図となっている。

このため、AI開発企業は州ごとに異なる規制法に準拠することを求められ、法令準拠の負担が増加している。このため、OpenAIは連邦政府がAI規制を統括し、米国内で共通のフレームワークを制定することを求めている。

一方、このフレームワークは法令ではなく、連邦政府と民間企業の自主的な協定「voluntary partnership」とする。法令による規制ではなく、企業の自主的な規制を尊重する。

出典: Generated with Grok

輸出規制:民主的なAIをグローバルに展開

米国で開発したAIを同盟国に提供し、高度なAIがグローバルに利用されることを促進する。

同時に、高度なAIが中国などで使われることを防ぐため、AI技術の輸出を三段階に分けて規制する。米国と同じレベルの輸出管理を導入している国々にはAI技術を制限なく提供する。

一方、中国やその同盟国に対しては、AI技術へのアクセスを禁止する。その中間の国々には、AI技術へアクセスするために、強固なセキュリティを求める。

著作権:自由に学習する権利

企業がAI教育で著作物を利用することを許諾するよう求めている。

著作物でアルゴリズムを教育することはフェアユースであるとの解釈を求め、米国がAI技術で世界のリーダーとなることを支援するよう要請している。また、欧州の著作権法がAI開発で大きな支障になると警告している。

更に、DeepSeekなど中国企業が先進モデルを開発できた理由は、著作権物を含むデータを自由に使うことができたためとの解釈を示している。米国がAI開発で世界をリードするためには、著作物をモデル教育で利用できることが重要な要件となる。

出典: Generated with Grok

インフラ整備:経済振興の基盤

米国はAI開発のインフラを大規模に整備する必要がある。

このためにインフラ整備法令「National Transmission Highway Act」を提唱。この法令は、データ通信、ファイバーネットワーク、天然ガスのパイプラインを整備し、データセンタの通信を強化し、発電所の能力を拡大する。

また、連邦政府が保有している情報をデジタル化し、これを公開することを求めている。政府が保有している大量の情報がモデルを開発するための教育データとなる。

また、AI開発のための経済特区「AI Economic Zones」を設立し、優遇税制などの制度を導入するよう求めている。

経済特区においてスタートアップ企業の技術開発や事業化を支援する。

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政府のAI導入:ベストプラクティスを示す

連邦政府が率先してAIを導入し、国家のモデルケースになることを求めている。

特に、安全保障部門で、サイバーセキュリティの法令を改定し、民間企業が連邦政府と協業できることを求めている。また、防衛部門や諜報部門はAIの導入を進め、国立研究機関を中心に機密情報を統合したAIを開発することを提言している。

軍事部門でのAI導入はタブーとされてきたが、敵対国に対峙するため、安全保障の観点から開発を加速する必要がある。

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OpenAIは規制緩和に傾く

OpenAIは従来から、連邦政府によるAI規制を求めてきたが、今回の提言書では一転して、トランプ政権にAI規制の緩和を求めた。

AIのイノベーションを重視し、緩やかな規制を導入し、法令ではなく企業による自主管理を提唱した。この背景には、DeepSeekなど中国企業が技術開発のペースを上げ、OpenAIに急接近している事実がある。

中国企業が予想を上回るペースでAI技術を伸ばしており、米国企業は連邦政府と連携してこれに対抗する姿勢を示している。

DeepSeekの登場が米国のAIアクションプランの構造に大きな影響を及ぼしている。