[No.184]トランプ氏圧勝・アメリカは変わった!!第二次政権でハイテク政策はどうなる、規制緩和でイノベーションが加速か、日本経済への影響は
アメリカ大統領選挙は大接戦と言われてきたがトランプ氏が圧勝した。
国民の過半数が米国第一主義を支持し、この四年間で国民の総意が大きくシフトした。もはや今までの常識は通用せず、新しいパラダイムの元で事業を展開する必要がある。
ハイテクに関しては、アメリカ国内で政策が大きく見直され規制緩和に向かう。日本や欧州へのインパクトも大きく、構築された関係が見直され、今後の協調のありかたを模索することになる。
巨大テックのスタンス
巨大テック経営者は一斉に、トランプ氏に祝意を示し、新政権と協調していく姿勢を示した(下の写真)。
トランプ氏は選挙戦でハイテク政策に言及することは無かったが、規制を緩和することでイノベーションを促進する方向に進むとみられている。AI政策も例外ではなく、規制が緩和され技術開発が急進する勢いとなった。
巨大テックやスタートアップ企業にとっては望ましい方向であるが、トランプ氏の発言がどう政策に反映されるのか不透明な部分は大きい。
ハイテク政策はどうなる
トランプ氏はハイテク政策に関し明確な意思表明をしていないが、共和党シンクタンクなどが政策を提言している。
これは「Project 2025」と呼ばれ、トランプ第二次政権の政策を包括的に提示している(下の写真)。ハイテクに関しては、AI、量子コンピュータ、次世代通信技術/5G、次世代製造技術、バイオテクノロジーに関する政策に言及。
AIに関しては、国家安全保障の観点から、中国を念頭に、AI先進技術を敵対国に輸出することを厳しく制限することを求めている。また、AIなど高度な技術が盗用されることを防ぐため、安全技術の開発を提言している。
イノベーション推進
Project 2025はAIの安全性を求めると同時に、技術開発におけるイノベーションを推進することを提言している。
これは「Tech-Neutral Approach」と呼ばれ、先進技術の開発を優先し、規制を最小限に留めるよう求めている。AI開発においては、政府の規制を最小限とし、企業による自主規制を推奨している。
新政権がこの提言を採用するかどうかは見通せないが、基本路線としてはトランプ氏のビジョンに沿っている。
トランプ政権がAI開発を後押しすることで、技術開発が急進する。
反トラスト法の運用を緩和
トランプ政権では反トラスト法の運用を緩和する方向に進むとみられている。
バイデン政権では司法省がGoogleをインターネット検索や広告事業で反トラスト法に違反する疑いがあるとして提訴し、連邦地方裁判が司法省の主張を認める判決を下した(下の写真)。司法省はこの判決を受け、Googleを解体するなどの指針を示している。
また、連邦取引員会(Federal Trade Commission)はMetaやAmazonを反トラスト法違反で提訴している。
トランプ政権は、反トラスト法の厳格な運用方針を緩め、企業が自由に事業を展開できる方向に進む公算が大きい。
ソーシャルネットワーク
トランプ第一次政権はソーシャルネットワークTikTokを安全保障の観点から米国での事業を禁止する指針を打ち出した。
バイデン政権では、連邦議会がTikTokの米国における事業を禁止する法令を可決した。トランプ氏は先の政策を翻し、TikTokの事業継続を認めると発言している。
TikTokにとってはトランプ氏によりビジネス存続の危機を救われた形となった。一方、トランプ氏や共和党議員は、ソーシャルネットワークが保守系の意見を制限しているとして、Facebookなどに自由に発言できるよう求めている。
ソーシャルネットワークはリベラルに偏重しているとして、Metaなどへの圧力が高まることが予想される。
暗号通貨
トランプ氏は暗号通貨をサポートするポジションを示し、選挙戦で暗号通貨企業や個人から絶大な支持を受けた。
連邦議会下院議員の選挙では、暗号通貨をサポートする議員が相次いで当選し、暗号通貨コミュニティの影響力を示した。バイデン政権では証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)が暗号通貨を規制する政策を展開しているが、トランプ政権ではこれを緩和する方向に進むとみられる。
暗号通貨の取引が活発になることを見越して、ビットコインなど暗号通貨の価格が急上昇している。
シリコンバレーのムード
巨大テックの経営者はいち早く、トランプ氏と接触し協調していく姿勢を示した。
また、スタートアップ企業は規制緩和で企業買収などが進み、ビジネスが活性化すると期待している。シリコンバレーはリベラルな文化で、トランプ氏を支援することはタブー視されてきた。
しかし、企業の価値判断は事業収入で、個人の思想と相いれない部分があるものの、トランプ第二次政権と良好な関係を構築するための準備を進めている。
日本や欧州へのインパクト
トランプ新政権も米国第一主義を基軸政策とすることで、欧州や日本への影響が甚大となる。
トランプ氏は自国の製造業を保護するため、同盟国からの輸入品に10%から20%の関税を課す方針を示しており、影響は避けられない情勢となっている。
ハイテク分野においては、AIに関し同盟国と協調して安全技術の開発を進めてきたが、この方向性が不透明となった。
アメリカが変わった
2016年の大統領選挙では所謂MAGAサポータの支持で当選したが、今年はアメリカ国民の過半数がトランプ氏の政策に共鳴した。
トランプ氏は異端者ではなく、アメリカ国民が米国第一や保護主義を基本理念する政策を望んでいる。バイデン政権は同盟国と協調する路線を歩んできたが、これが否定され、アメリカは自国優先の閉じた社会に向かうことになる。
アメリカが大きく変わった。