[No.169]“シリコンバレー大統領”が誕生するか、ハリス氏のハイテク政策に期待が高まる、大統領令は継続され企業に責任あるAI開発を求める
バイデン大統領の退陣表明を受け、ハリス副大統領が民主党の大統領候補となり、選挙キャンペーンが始まった(下の写真)。
ハリス氏は女性層や黒人層やZ世代から支持を集め、人気が急上昇している。ハリス氏はシリコンバレーとの関係が深く、企業経営者やベンチャーキャピタルからの支援が急拡大している。バイデン政権ではハリス副大統領は”AI総司令官”と呼ばれ、AI政策を陰で支えている。
ハリス政権が誕生すると、現行の大統領令が継続され、ハイテク企業に責任あるAI開発を求める。
ハリス氏とシリコンバレー
ハリス氏はカリフォルニア州オークランド出身の若い黒人女性で、サンフランシスコの司法長官を務め、シリコンバレーとの関係が深い。
企業経営者とのネットワークが広く、テクノロジーに関する理解が深く、ハイテク企業から信頼されている。ハリス氏は、AIに関しては国民の権利を守ることを第一義に政策を進め、AI開発で安全性の検証を求めるが、ハイテク企業はこの指針に理解を示している。
ハリス氏が民主党の大統領候補となり、トランプ氏との違いが際立ち、急速に支持を集めている。
選挙演説はロックコンサートのような熱気で、有権者から熱狂的な指示を受けている(下の写真)。
AIに関する大統領令
バイデン政権の大きな成果がAIを安全に運用するための指針「大統領令」の制定である。
大統領令は大規模言語モデルを安全に開発し運用することを規定した指針で、AIが社会に危険性をもたらさないよう、開発企業に安全試験を実施することを求めている。
対象は次世代の生成AI「フロンティアモデル」で、GPT-5などこれからリリースされる製品は出荷前に安全試験が求められる。
ハリス副大統領の役割
ハリス副大統領はバイデン政権のAI総司令官(AI Czar)として政策立案を支えてきた。
ハリス氏は大統領令の事実上の責任者で、AIを安全に開発運用するための指針を制作した。また、これに先立ち、ハリス副大統領は主要企業の経営者と面会し、AI製品の自主規制「Voluntary Commitment」を求めた(下の写真)。
これはAI企業が製品を出荷する前にその安全性を保障することを要請するもので、GoogleやMicrosoftなどは、大規模言語モデルを公開の場で検証し、その安全性を確認することをコミットした。
ハリス政権のハイテク政策は
ハリス陣営はハイテク政策についてコメントを発表していないが、バイデン政権の政策を継続すると予想される。
大統領令に従って、開発企業はフロンティアモデルの安全試験を実施することなる。また、ハリス氏は連邦議会への働きかけを強め、AI規制を法令として制定することを求める。
ハリス氏は国民の自由や権利を守ることを第一義とし、AIのバイアスを抑止し、人種や性別で差別を受けないよう、責任あるAI開発を法令で定める方向に進むと予想される。
シリコンバレーの反応
シリコンバレーのハイテク企業経営者の多くはハリス氏を支持することを表明している。
LinkedInの創業者Reid Hoffmanはハリス氏を支持し選挙キャンペーンを支援することを表明した。また、Facebookの元COOであるSheryl Sandbergも支持を表明し、ソーシャルメディアで支援メッセージを拡散している。
一方、Elon Muskはトランプ陣営に月額4500万ドルの寄付をすると報道されてきたが、この事実を否定し、共和党への支持は限定的であると説明した。
シリコンバレーの潮目が変わり、経営者の多くがハリス氏支持にポジションを変えている。
Z世代のリアクション
ハリス氏が大統領候補となったことで、若い世代が熱狂的に支持している。
Z世代を中心に、ハリス氏の大統領選をサポートし、TikTokなどのソーシャルメディアで支援メッセージを発信している(下の写真)。ハリス氏の掲げる政策は、若い世代の心情に訴求し、夢と希望を与えてくれる大統領として、強く共感している。
オバマ氏が登場した時の熱狂の再現で、ソーシャルメディアで大量のミーム(Meme)が拡散している。
バイデン大統領との相違
バイデン大統領は後継者に道を譲ったことについて、民主党支持者だけでなく、国民から幅広く称賛されている。
ハリス氏は基本路線としてバイデン政権の政策を引き継ぐものの、国民に向けたメッセージは大きく異なり、有権者の心情にアピールしている。ハリス氏の主張は簡潔で、政策を分かりやすい言葉で伝え、その背後にある熱意が有権者にインパクトを与える。
また、バイデン大統領やトランプ氏から年齢が大きく若返り、新時代が来ることを予感させ、これが有権者に夢と希望を与えている。
ハリス人気が高まるものの、両者の支持率は拮抗しており(下のグラフ)、これから本格的な選挙戦が展開されることになる。