[No.210]xAIはGrok 3のシステム・プロンプトを公開!!ここにマスク氏のビジョンが埋め込まれている、AIモデルは政治的に中立で真実を極限まで探求する
イーロン・マスク氏が創設したxAIは高度なAIモデル「Grok 3」を運用している。Grok 3は機能が大幅に強化され、OpenAIなど先頭集団に追い付いた。
また、Grok 3はマスク氏のビジョンを色濃く反映したモデルで、政治的に中立な立場を取り、真実を極限まで探求する設計となっている。xAIはGrok 3のシステム・プロンプトを公開しこの事実が判明した。(下の写真、マスク氏はXでのユーザ名を「Kekius Maximus」に変更した。
マスク氏は米国で人気が急落したが、古代ローマの皇帝を名乗り復活を目指している。)

Grok 3が誤作動
今週、Grok 3が誤作動し、偽情報を繰り返し出力するというインシデントが発生した。
Grok 3は、南アフリカで白人が集団で殺害されたという陰謀説「White Genocide(白人のジェノサイド)」を繰り返し出力した。原因を調査すると、Grok 3の「システム・プロンプト(System Prompts)」が改ざんされたことが判明した。
xAIの社員によるGrok 3へのサイバー攻撃で、社会に大きな衝撃をもたらした。 (下の写真、Grok 3は問われたこととは無関係に「White Genocide」について説明を始めた。)

システム・プロンプトとは
xAIはこれを修正するとともに、システム・プロンプトを公開し(下の写真)、AIモデルの透明性を高める対策を実施した。
そもそもシステム・プロンプトとは、AIモデルが守るべきルールを制定する仕組みで、Grok 3はこの規定に従って稼働する。ここには「政治的に中立」で、「真実を最大限探求」するなど、AIモデルの行動規範が定義されている。
人間社会では、企業は行動規範を定め、社員はこれに沿って行動することが求められる。
AIモデルはシステム・プロンプトの規定に従って動作するよう設計されている。

システム・プロンプトを読むと
Grokのシステム・プロンプトが開示されたのはこれが始めてで、これを読むとGrok 3の設計コンセプトを理解することができる。
ここには、Grok 3がチャットボットとして稼働する際の規定や、推論モデル「DeepSearch」として稼働する際の規定が設けられている。
多くの項目が規定されているが、主なものは:
知識の探求:Grok 3は「truth-seeking and neutrality」として、真理を最大限に探求し、政治的にバイアスしないで中立な立場を取る(下の写真、シェイドの部分)
コア機能:Grok 3は幅広い分野をカバーし利用者の質問に正しく回答することを基本技術とする
リアルタイム情報:Grok 3はウェブサイトや「X」の情報を参照し最新のデータを提供する
政治的に中立:Grok 3は主要メディアの情報に対し「extremely skeptical(重大な疑問を呈し)」盲目的にこれらを採用することを抑止する (下の写真、シェイドの部分)

マスク氏のビジョンを反映
Grok 3のシステム・プロンプトはマスク氏のビジョンを色濃く反映していることが分かる。
マスク氏は、他社のAIモデルがリベラルにバイアスした「Woke AI」であると批判している。Google Geminiが黒人のワシントン大統領を生成したことを事例に、人種平等を間違って解釈していると指摘する。
マスク氏はこれらを教訓に、Grok 3を政治的に中立であり、また、真実を最大限に探求するモデルにすると改めて宣言した(下の写真)。

異なるキャラクターのAIモデル
Grok 3のシステム・プロンプトから分かるように、各企業は独自のキャラクターを備えるAIモデルを開発している。
OpenAIやGoogleはシステム・プロンプトを公開していないが、モデルを使ってみると、これを経験的に感じる。
Anthropicはシステム・プロンプトを公開しており、これによると安全なAIモデルを生成することを究極の目的としている。
ファインチューニングとの関係
一方、システム・プロンプトだけでAIモデルの挙動を全て規定できるわけでは無い。
Grok 3はプレ教育の過程で大量のデータを学び、また、ポスト教育の過程では人間の価値に沿った強化学習が実行されている。Grok 3の機能や精度や挙動は教育データの品質に大きく依存する。
システム・プロンプトは、完成したモデルを統括するルールブックとして位置付けられ、これで挙動を完全にコントロールできる訳では無い。
AIモデルの制御は両者の組合せで行われ、複雑で難しい作業となる。
Grok 3は真実を最大限に探求するのか
Grok 3は中立で真実を最大限に探求するモデルとして設定されているが、上述の通り、システム・プロンプトだけでこれを実現できるわけはない。
また、「中立」や「真実」に関する定義は常に議論となり、共通の理解は確立されていない。
また、xAIはこの指標でGrokをベンチマークし、その結果を示している訳でもない。Grok 3の利用においては、設計仕様とは別に、AIモデルの出力を人間の眼で検証し、「中立」や「真実」を確かめる必要がある。
(下の写真、Grok 3に大統領が関税を課す権限があるかと質問すると、Yesと回答しトランプ政権を擁護をする解釈を示した。)
