第1回:GPUについて理解しよう!
GPUは近年、多くの領域で目にするようになった言葉ですが、具体的にGPUがどんなものなのか?ということについて、詳しくは知らないという人も少なくありません。
このコラムでは、そんな注目のプロセッサであるGPUについて、深く理解してもらえるような情報をお届けします。
第1回となるこの記事では、GPUの概要を改めて確認していきましょう。
目次
GPUとは
GPUはGraphics Processing Unitの略称で、その名の通りPCにおけるグラフィック処理を担当するプロセッサです。
3Dグラフィックをデスクトップで表示するためには、絶え間なく定型化された表現処理を行う必要があり、そのためには多大な演算を実現するためのリソースが必要です。
GPUはそんなグラフィック処理の定型業務に特化したユニットで、数千にものぼるコアを搭載し、演算による負荷を一手に引き受けることができます。
また、コアと合わせて近年のGPUに搭載されているのが大容量のビデオメモリ(VRAM)です。
メモリ容量が大きいほど一度に計算できるタスクの量も増え、滑らかなグラフィック処理を実現します。
GPUはその高度な処理能力を活かし、グラフィック処理以外の分野でもその能力を発揮する機会が増えています。
GPGPU(General-Purpose Computing on Graphics Processing Units)と呼ばれる使い方は、これまでCPUが担当してきた処理タスクをGPUに任せるというもので、グラフィック処理とは異なる領域に特化したGPU製品も増えてきました。
CPUとの違い
CPUとGPUはプロセッサという点では共通しているものの、その特徴については大きく異なります。
最大の違いは、演算処理の方法です。
CPUは一つずつタスクを処理する連続処理を特徴としていますが、GPUは複数の同一タスクにまとめて対応する並列処理を強みとします。
この違いを理解する上では、CPUとGPUが異なる役割を担っている背景を知ることが大切です。
CPUはOSの操作やアプリの展開、マウス操作、コマンドの実行など、コンピュータ上の幅広いタスクに対応することが主な役割ですが、GPUはグラフィック処理に特化しています。
色々なタスクをこなすため、CPUは一つずつ演算処理を行い、その精度の高さが重要視される一方、GPUは似たようなグラフィックの処理という、定型化された演算処理が必要であるため、一度に大量にタスクをこなせる能力が必要です。
そのため、GPUには高度な並列処理能力が実装され、とにかく高速で演算を行うことに特化しています。
演算の柔軟性の高さという点では、シングルタスク処理に強いCPUが優れているものの、単純な演算速度だけで比較するならば、はるかにGPUが優れます。
このような演算アプローチの違いから、CPUとGPUでは活躍する領域も異なります。CPUはあらゆるコンピュータデバイスに必ずといって良いほど搭載されており、PCはもちろん、家電や自動車、ゲーム機、デジタルカメラなど、枚挙にいとまがありません。
一方のGPUは、CPUと比べるとその役割は限定的です。
しかし、PC上のグラフィック処理に特化してきたGPUも、最近ではAI開発をはじめ、従来よりも多くの活躍の場が与えられるようになってきました。
AI開発で注目を浴びるGPU
近年GPUが高く評価されるようになったのは、GPUの高い並列処理能力が他の領域にも応用可能であることが、広く知られるようになったためです。
グラフィック処理以外でGPUが活躍している領域として、最もわかりやすいのがAI開発やデータサイエンスの分野です。
優れたAIを開発するためには、途方もない時間をかけて機械学習を実行しなければなりませんが、その際に発生するのが、グラフィック処理のような膨大な演算処理を必要とするタスクです。
10年ほど前まで、AIの開発にもCPUが採用されており、地道な機械学習が行われてきました。
しかしディープラーニング(深層学習)の実践にあたり、ある研究者がCPUからGPUへ切り替えたことにより、従来の学習プロセスをはるかに上回る成果を実現したことから、瞬く間に世界中のAI研究においてGPUが導入されることとなったのです。
AI開発において、今やGPUは欠かせない存在となったのはもちろん、AI開発に特化したGPUもメーカーから販売されるなど、AI分野におけるGPU運用の難易度も下がりつつあります。
特にAI開発の最先端である、ディープラーニング開発においては膨大なGPUリソースが不可欠で、GPUサーバーの導入やクラウドGPUといったサービスの普及も進みました。
その他の領域でもGPUは活用されている
AI以外の領域でも、GPUを目にする機会は少なくありません。
仮想通貨のマイニングにおいて、膨大な計算処理タスクの対応力に優れたGPUは、多大な貢献を果たしていますし、メタバースやXR技術の進歩に伴い、高度なグラフィック処理能力を持ったGPUは欠かせない存在です。
優れたGPUのグラフィック処理能力を、物理シミュレーション(CAE)に応用しようという取り組みも増えてきました。
3DCADやBIM、そして高性能なGPUを用いて、極めて現実世界に近い環境を仮想空間に再現し、高度なシミュレーションを実行することが可能です。
またGPUの高度な演算処理能力は、HPC分野でも効果を発揮しています。
5GやIoT、そしてAIといった技術の登場は、データ活用の可能性を飛躍的に向上させていますが、一方でデータを処理するための高性能コンピュータが持つ重要性も高まってきました。
ハイエンドGPUを搭載したHPCであれば、従来のPCでは対応できなかったデータ処理需要に応え、組織のデータ活用の幅を大きく広げてくれるでしょう。
まとめ:GPUには今後もさらなる需要拡大が期待される
GPUの歴史は1970年代や80年代まで遡ることができますが、現在はかつてないほどのGPU需要の高まりを迎え、一時期は入手が困難になることもありました。
CPUの補助として考えられてきたGPUは、今やCPUとは異なる強みを武器に、最先端のテクノロジー活用に欠かせない存在となっています。
GPUは常に進化を続けているため、技術の進歩に伴い買い替えも検討しなければなりません。
現在はGPU需要のピークを過ぎ、以前ほど価格が高騰したり、容易に手に入らなかったりなどに悩まされる心配はありませんが、研究や開発のスピードを上げるには、GPUは欠かせない存在であり、今後のGPUの性能向上やロードマップが注目されています。
自社のGPUスペックや購入時期を確認し、必要に応じて最新GPUの導入について検討することをおすすめします。